クラウドストレージ採用を断念した理由、愛媛大学病院(page 2)

オブジェクトストレージで医療情報システムを構築

2016/03/26 17:42
神近 博三=日経デジタルヘルス

サービス停止時の撤退戦略を描けなかった

 統合ストレージの構築では、米Amazon.com社などが提供するクラウドストレージの採用も検討した。クラウドストレージは激しい競争を背景に価格が年々低下している。さらに、耐久性についてもAmazon.com社の「Amazon S3」では同社のFAQサイトによれば「1万個のオブジェクトが格納されている場合、単一のオブジェクト損失が発生する予測平均発生率は、1000万年に1度」というレベルに到達している。

 だが、木村氏のチームはクラウドストレージの採用を見送った。理由の1つは、サービス停止時の撤退戦略が確立できなかったことである。例えば、2014年に米Symantec社の「Backup Exec.cloud」、2016年に入ってからも米Hewlett Packard Enterprise社の「HP Helion Public Cloud」がサービスを停止した。停止の発表から実際の停止までの期間はBackup Exec.cloudが1年、HP Helion Public Cloudは3カ月ほどしかなく、その短い期間に新しいサービスを見つけてデータの引っ越しを完了させなければならない。「こうした事態に対応する撤退戦略を描くことができなかったので、時期尚早と判断した」(木村氏)。

 もう1つの理由は、経済産業省の「医療情報を受託管理する情報処理事業者における安全管理ガイドライン」の要求事項「サーバ・ストレージ等は国内法の適用が及ぶ場所に設置すること」である。ここでの「国内法の適用が及ぶ場所」はデータセンターの物理的な場所ではなく、クラウドベンダーと契約する場所を意味する。2013年前半の時点で、外資系クラウドベンダーではAmazon.com社だけが日本国内に自前のデータセンターを持っていた。だが、契約の場所はAmazon.com社の本社所在地である米国ワシントン州であり、「国内法の適用が及ぶ」という要求事項を満たすことができなかった。かといって、国内ベンダーのクラウドストレージでは、利用料金が一気に跳ね上がってしまう。

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