――熱設計に、新たな取り組みが求められているのですね。

 はい。このような市場環境で、熱に関する技術課題はますます増えています。以前と違って「熱で動かない」問題も増えています。製造プロセスの微細化が進み、リーク電流が増大したため、「ちょっと冷却能力が足りない → 少し温度が上昇 → リーク電流増加 → 発熱量増加 → さらに温度が上昇」というスパイラルに入ってしまいます。これは「失敗の増幅」ともいえる現象で、これまであまり熱を意識しなかった回路設計者が改めて熱の怖さを意識する背景にもなっています。

 以前は「最大発熱量を処理できる冷却能力を備える放熱設計」が一般的でしたが、それでは機器の外形寸法が大きくなりすぎて、市場要求に応えられません。そこで小型化を優先します。すると、最大発熱量を処理できる冷却能力を持つことができないため、厳しい使い方によって機器の温度が上昇したら処理を抑制したり(画面を暗くするなど)します。「どのような使い方でどこまで持つか」というダイナミックな熱設計が必要になりました。

 また少しでも均熱化、平準化を行うため、ヒートパイプ・ベーパーチャンバーなどの冷却デバイス、蓄熱材(PCM)、小型強制空冷(マイクロファン)も広く検討されています。

――熱設計において、今後の市場要求に対応するために必要なことを、教えてください。

 以前から、熱を出す「回路設計」と、それを冷やす「機械設計者」という構図がありました。空気を動かして放熱する機器(ファンやヒートシンクなどの冷却デバイスを中心に冷却系を設計する機器)は、その設計構造でも対応できます。

 しかし、基板の配置・配線、筐体接触などを工夫し、冷却デバイスを使わずに基板と筐体で冷やす最近の機器では「基板や筐体に放熱ルートを埋め込む」設計が必要になっています。そのためには、機器設計に関わるすべての人が一定の放熱知識を持つこと、部品・回路から筐体まで全体を見渡して放熱設計を行う人の存在(育成)が不可欠になっています。