テクノオフィス凜代表の中野隆志氏
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 金属製部品の加工方法として「板鍛造」が注目を集めている。高精度で複雑な形状の部品をプレス加工だけで造れるため、3割を超えるコスト削減効果を見込める優れた加工法だ。日本発の加工法であり、世界に対して優位性を発揮できる技術でもある。「技術者塾」では、「高精度、高付加価値形状、コスト3割以上減をもたらす「板鍛造」」(2015年11月4日)の講座を開催する。講師であるテクノオフィス凜代表の中野隆志氏に、板鍛造を使いこなす利点を聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──日本企業の中で「板鍛造」への注目度が高まっていると聞きます。まず、板鍛造とはどのような加工方法なのでしょうか。

中野氏:板鍛造とは、冷間鍛造と板金加工を融合させた加工方法です。2つの加工法から良いところを採った技術となります。冷間鍛造の長所は、肉厚の部品を高精度に成形できること。一方、板金加工の長所は、板状のワーク(コイル材)を使って複雑な形状の部品を安く造れること。従って、板鍛造を使えば、複雑な形状の肉厚部品を高精度に、かつ低コストで加工することができるのです。

──なぜ、板鍛造への注目度が増しているのですか。

中野氏:板鍛造が今、普及期に来ているからです。設計者や生産技術者、製造技術者の間で「使ってみたい」というニーズが顕在化する一方で、板鍛造を実現するために必要なCAE、プレス機械、金型の表面処理などの要素技術がそろってきました。

 実は、板鍛造の技術自体は25年以上前に開発されました。ところが、電機製品の小物精密部品などに用途が限定されてきました。板鍛造の要素技術が成熟するまでに時間がかかったのです。ところが、最近になって要素技術がかなり進化し、板鍛造の技術を確立させた加工メーカーが徐々に増えてきました。その結果、クルマの自動変速機(AT)の歯形部品など、より大きくて肉厚のある、複雑な形状の部品を成形できるようになってきたのです。

 しかし、本格的な普及期はこれから。板鍛造を使いこなすことでつかめるビジネスチャンスはこれからやって来ると思います。例えば、自動車部品を例に板鍛造への置き換えが可能な部品を見ると、現在板鍛造が使われている部品の割合は3割程度。7割の部品がまだ残っています。

 しかも、板鍛造の技術は進化し続けています。それに伴い、板鍛造で置き換えられる対象部品は拡大するはずです。この点を考慮すると、かなり有望な加工技術だと言えると思います。

 自動車メーカーは板鍛造の導入に積極的です。最も積極的な自動車メーカーはトヨタ自動車でしょう。同社は技術の本質や製造コストを把握するために、自ら生産技術を開発することで有名です。社内で技術を確立するとともに、サプライメーカーからの新技術提案に積極的に応えてくれます。

 自動車メーカーのこうした動きに呼応するかのように、現在、板鍛造の導入に懸命になっている1次部品メーカーや2次部品メーカーが目立ちます。