次世代の5GやIoTでは、無線通信が大きな役割を果たし、高周波・マイクロ波技術はとても重要になる。通信速度など高い性能が要求されると同時に、無線通信でつながる機器やユニットの数量は急速に増大する。従来技術の延長上では、予測される課題を解決することは難しい。日経BP社は「高周波・マイクロ波技術の基礎と、市場価値を生み出す応用展開」と題したセミナーを、技術者塾として2016年11月11日に開催する(詳細はこちら)。本講座で講師を務める松浦裕之氏(産業技術総合研究所 電子光技術研究部門 招聘研究員)に、高周波・マイクロ波の技術動向や、今後のニーズに対応するために必要なことなどを聞いた。(聞き手は、日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

――高周波・マイクロ波について、この1年の市場動向、応用動向をご紹介ください。

産業技術総合研究所 電子光技術研究部門 招聘研究員の松浦裕之氏

 モバイル機器通信は、機器数量の増大と通信速度の高速化といったように、量と質の両面で拡大を続けています。携帯電話機やスマートフォンは言うまでもありません。また、無線LANを例に取ってみると、都市の至る所で信号が飛んでいて、1人で無線LAN対応機器を多数持っている状況です。また、通信速度が高速化されるなど、次第に便利になっていることは、ご存じの通りです。電波は直接目には見えませんが、高周波やマイクロ波が大活躍しています。

――高周波・マイクロ波について、この1年の技術動向、技術トピックスをご紹介ください。

 通信量の増大に伴い、周波数領域の拡大や効率化などの技術開発が進んでいます。例えば、周波数の高いミリ波帯の開拓が精力的に進められています。また、効率化のために、より高度な変調方式の利用やきめ細かな制御が行われています。

 半導体素子材料についても、従来のものに加え、GaNなど高周波用パワー素子の実用化が進んでいます。

――高周波・マイクロ波分野の、この先の動向、今後のニーズに対応するために必要なことは。

 携帯電話機を例に取ると、次世代の5Gシステムに向けて、各所で研究開発が盛んに行われています。また、IoTというキーワードがありますが、あらゆるものをインターネットにつなぐようになると、無線通信が大きな役割を果たすことになり、高周波マイクロ波技術が重要になります。将来の市場の拡大は明らかです。

 通信速度をはじめとして高い性能が要求されると同時に、通信を行う機器やユニットの数量は増大していきます。さらに、豊かで便利な社会を実現するために重要な技術であることから、多くの人が関わることになるでしょう。ただし、価格競争は非常に激しくなると思います。

 これらに対して、従来手法の延長だけでは、なかなか太刀打ちできないと思います。そこで、本セミナーの案内にもありますように、デジタル技術をうまく活用することが必要だと考えています。高周波回路単体で機能させようとするのでなく、例えば、出力信号のモニタリング結果からデジタル技術を用いて補正量を求め、高周波回路にフィードバックするようなことです。

 また、高周波だけで実現しようとすると回路の寸法が大きくなってしまうが、A-D変換してデジタル信号処理を利用すると、小さなシリコン(Si)集積回路で実現できるようなこともあります。さらには、以前は実現できなかったことが、高周波技術とデジタル技術の両方をうまく使うことで実現できることもあります。例えば、多数の高周波回路をデジタル技術でうまくコントロールする、「MIMO」と呼ばれる多数の送受信アンテナを用いたシステムなどです。