スマホの頭脳を押さえた

 2016年2月、Huawei社はスマホの新製品「P8」が1600万台売れたと発表しました。1カ月に300万~400万台売れているのではないかという台数です。

 この製品のキーポイントは、スマホを動かすための頭脳の部分を全て、HiSilicon社が1社でチップセットという形にして用意したことです。プロセッサー「Kirin 935」を中核として、無線通信用トランシーバーICや電源管理ICなどを組み合わせたチップセットです。センサーやWi-Fi関連、タッチセンサー関連、GNSS、GPSなどは、汎用的なチップを買ってきて使えばいい。そう考えて、アプリの動作や通信の機能などに注力し、そのプロトコルやソフトウエアをパッケージングしたものをプラットフォーム化して、Huawei社に供給する。骨格は全て自社で取りそろえる。これが中国の戦略です。Huawei社/HiSilicon社に限らず、Spreadtrum Communications社やLeadcore Technology社など、他の中国のプロセッサーメーカーやプラットフォーマーもチップセットとして提供する戦略を取っています。

 チップセットで提供してくれると、使う側も使いやすいのです。完全な設計図まで付いてきます。簡単にスマホができあがってしまいます。スマホメーカーは、あえて分かりやすく言えば、外観のデザインだけを考えていればいいのです。中身のことは考えなくていい。Qualcomm社やHiSilicon社からチップセットを買ってきて、他に必要な部品を並べれば誰でもスマホがつくれるのです。中国には「豆腐店でもスマホはつくれる」という言葉がありますが、本当に豆腐店がスマホをつくろうとしたほどです。

 だから、Huawei社やHiSilicon社を含めて、中国のスマホ関連メーカーがあっという間に世界のトップレベルに躍進してきたのです。中国は、こうした事業モデルをつくってきたわけです。このチップセット戦略は、中国をはじめ、世界中で主流になっています。対照的なのが日本です。アプリケーションプロセッサーはA社、電源ICはB社、トランシーバーはC社という具合に、ばらばらです。Huawei社のようにプラットフォームを構築できた例は1つもありません。

 2009年に「K3」、2012年に「K3V2」を発表して私たちの前に現れたHiSilicon社が、わずか6年であっという間にスマホ用プロセッサーで世界のトップメーカーになってしまった。これがクルマやロボティクスで起こる可能性は十分にあり得ます。こうしたことが、今後はどんどん起こり得ることを、HiSilicon社の事例から読み取っていく必要があります。

(次回へ続く)