アナログ回路の設計技術が大きく変わりつつある。IoT(Internet of Things)市場の立ち上がりによって、アナログ回路製品に求められる要件が変わってきたからだ。日経BP社は「CMOSアナログ回路入門」と題したセミナーを、技術者塾として2016年1月25日に開催する(詳細はこちら)。本講座で講師を務める群馬大学 産学連携・共同研究イノベーションセンター 客員教授の松田順一氏に、アナログ回路設計の新たなポイントなどについて聞いた。(聞き手は、日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

――アナログ回路の市場動向、応用動向に変化が見られます。

群馬大学 産学連携・共同研究イノベーションセンター 客員教授の松田順一氏

 IoT(Internet of Things)の市場が急速に立ち上がりつつあることで、アナログ回路製品の開発競争が激化してきています。IoTでは、あらゆるモノがインターネットを通してつながり、クラウドにデータがアップロードされ、制御や監視などのためのデータ処理が可能になります。従って、産業分野も多岐にわたります。自動車、医療・ヘルスケア、セキュリティー、そしてインダストリーなどです。

 ここで必要な技術は、センサー、信号処理、ワイヤレス通信(RF)、電源のパワー・マネージメントなどです。なお、信号処理はデジタルになりますが、信号の入出力はADCやDACのアナログになります。これらの技術の組み合わせから成るアナログ回路製品が必要とされ、市場が大きく成長することが期待されます。

――アナログ回路設計に求められる技術も変わってきています。

 IoTでは膨大なデータを収集し、処理することが必要となります。そこで使うアナログ回路は、小型で低電圧・低消費電力、そして高速処理のできる技術を必要とします。そうした技術開発を、企業や大学などが加速しています。IoT市場は今後の電子情報産業を牽引していくと考えられ、この動向は変わらないでしょう。

 このような技術動向の中で、例えば群馬大学の小林研究室は、各種センサーの電源として用いるエネルギーハーベスト用電源として、240mVの低入力電圧で動作を開始する、最大効率97%の昇圧レギュレーターをシミュレーションで実現し、2013年に「Analog Integrated Circuits and Signal Processing」で発表しました。また、同研究室では、ADCに関しても、フィボナッチ数列を逐次比較型(SAR)ADCに適用し、従来型のSAR ADCに対して高速化を達成。「ISCIT 2015」で発表しました。

――アナログ設計において、今後の市場要求に対応するために必要なことを、教えてください。

 IoT市場が大きく伸びることが期待される中、アナログ回路設計では、純粋なアナログ回路技術だけではなく、高周波回路、アナログ・デジタル混載、パワーマネージメントなどといった非常に多くの技術が必要とされます。また、この市場ではアイデアを早く具現化するスピードも求められます。

 これらの技術に早急に対応するには、急がば回れになりますが、まずはアナログ回路の基礎(電気回路、電磁気学、制御工学など)を短期間で要領よくしっかりと押さえた上で、アナログ回路設計を実践する中で応用力を磨いて、アナログ回路をシステムとして最適設計できる技術者を多く育成しておくことが必要です。