ワールドテック講師(元トヨタ自動車株式会社FC技術部)の宮本泰介氏
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 簡単には壊れないという信頼により獲得した「高品質」という名の日本企業のブランド。それを支えてきた金属製品の強度設計を再検討すべき時が来ている。軽量化などでギリギリを追求する「限界設計」を要する時代を迎える中、疲労強度を基礎からしっかりと押さえていなければ製品の耐久性を保証できなくなりつつあるからだ。「技術者塾」において「自動車構造部品の信頼を支える 金属疲労メカニズムと疲労向上技術」(2016年10月28日)の講座を持つ、元トヨタ自動車株式会社FC技術部でワールドテック講師の宮本泰介氏に、強度設計に関して日本企業が抱える課題を聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──信頼性と耐久性を支えるのが疲労強度設計で、それが製品の価値につながるとトヨタ自動車は気が付いた、とのこと。同社に何があったのですか。

宮本氏:世界中のお客様からたくさんクレームをいただいたからです。お叱りを受けて、2度とこんな思いをお客様にさせたくないし、自分たちもしたくない。そういう気持ちからトヨタ自動車は耐久試験にものすごく力を入れ始めました。その姿勢は現在でも変わりません。そこまでしなくてもよいのではないかというくらいまで試験します。当然、お金も時間もかかります。しかし、妥協はしません。

 最近、コンピューターやITを使ってシミュレーションで評価を行い、試作を減らして開発設計期間を短くするという方法がはやっています。シミュレーションを駆使することは間違っていません。でも、試作を極端に減らすようなことをすれば、信頼性や耐久性といった品質は落ちることでしょう。疲労強度は「ものを作って壊す」ということをしないときちんと評価できない点があるからです。

 その証拠に、トヨタ自動車は試作車をそれほど減らしていません。疲労強度に関して、シミュレーションと実車との差異をきちんと把握することが極めて大切だと知っているからです。