1. はじめに
米Apple社のiPhoneのコスト構造を明確にし、利益の源泉を考察する。同社はかつて、ホシデンの10型モノクロ表示のアモルファスSi(a-Si)TFT液晶ディスプレーを世界で初めてパソコンに採用した注1)。このパソコン「Macintosh Portable」は1989年に商品化された。開発から量産に至る経緯を振り返り、現状との大きな違いを読者の皆様に知っていただけたら幸いである。
注1)筆者は当時、ホシデンに所属していた。
2. 大画面・高精細・インセル化しても、価格差はわずか
図1に、iPhone 4SとiPhone 5のディスプレーモジュールの比較を示す。iPhone 5の特徴は、ディスプレー内蔵型タッチパネル(インセル型タッチパネル)を採用したこと。また、iPhone 4Sと比べると、画面サイズが3.5型から4型へと大型化し、画素数は960×640から1136×640へと増えた。ディスプレーモジュールの外形寸法は115.2mm×58.6mm×9.3mmから123.8mm×58.6mm×7.6mmへと薄型化した。しかも重量は140gから112gへと軽量化。ところが、ディスプレーモジュールの価格は、37米ドルから44米ドルへと、わずか7米ドルの違いしかない。
モバイル機器にとって、いかにディスプレーモジュールの外形寸法を変えずに大画面・高精細化と薄型・軽量化を図るかは、とても重要である。にもかかわらず、価格差がわずか7米ドルとはなぜなのか?
以降では、この疑問に応えたい。まず、iPhoneのコスト構造から話を進めたい。