日本政府は成長戦略として「サービスロボット大国」を掲げており、高齢化社会の人手不足対策の一環としても期待されている。これから私たちの生活にロボットが欠かせない時代が到来する。

 身近なところでは、部屋を掃除するロボットや自動運転技術を搭載したタクシー(試験運用中)などがある。また高層ビルやマンションは外見こそ不動産だが、高度なビル管理システムによってロボットと呼んでも過言ではない機能を備えている。これらはいずれも人々の生活を支えることを目的としており、「安心」を実現するためには「安全」が欠かせない。本稿では、人々の生活を支える「生活支援ロボット」の安全性解析について解説する。

ロボットの歴史

 過去、二足歩行ロボットの開発において日本は世界最先端を歩んでいた。ホンダの「ASIMO」や、村田製作所の「ムラタセイサク君」などをご存知の方も多いだろう。日本の人型ロボット開発に海外は「追従できない」かのように見えたが、正しくは「追従する意思がなかった」のである。これは宗教上の理由によるものだ。

 日本は古来より、茶運び人形注1)や文楽(人形浄瑠璃)など、「文化芸術として人形を動かす」ことを昇華させた。しかし海外では「人を創造したのは神であるから、人間が人を真似たものを作ってはならない」との戒め(?)があった。小説「フランケンシュタイン(原題「Frankenstein; or, The Modern Prometheus」」はその戒めとしての代表作ではないだろうか。

 生活支援ロボットは、私たちの生活を支援するツールとして世界中で開発が進められているが、産業としては途上期にある。ハードウエアとソフトウエアが共存する複雑システムでかつ人との共存も前提となるため、従来の産業用ロボットなどとは安全原則で異なるアプローチが必要になる。例えば、部屋の中を歩行していたロボットが地震などの突発的な事態を検知した場合、適切に対応するためには「緊急停止」ではなく「止まらない」という安全が重要になる。

 安全工学の第一人者である向殿政男氏が提唱している安全性理論「Safety」では、従来のロボットは「機械安全(止まる安全)と労働安全(隔離の原則)」で安全を確保していた。一方、人と生活支援ロボットが共存するには「止まらない安全」が重要である。

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