戦後、日本の製造業は品質を重視する経営を推進し、高いグローバル競争力を実現して飛躍してきた。こうした日本の品質関連の取り組みを一貫して支えてきたのが「デミング賞」で知られる日本科学技術連盟(以下、日科技連)だ。日科技連では「第102回 品質管理シンポジウム」(2015年6月2~4日)を「感動と安心の品質創造と品質保証」をテーマに開催する。日経テクノロジーオンラインは、同シンポジウムの開催に先立ち、シンポジウム登壇者のインタビュー記事を連載する。今回はトヨタ自動車の先進技術開発カンパニーPresidentで専務役員の伊勢清貴氏のインタビュー(上)をお届けする。(聞き手は山崎良兵、中山力)

──燃料電池車(FCV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車が脚光を浴びており、ガソリンやディーゼルなどの既存のエンジン車、普及が進むハイブリッド車の次にどのパワートレーンが主役になるのかに関心が集まっています。トヨタ自動車はクルマの未来がどうなると予想しているのでしょうか。

伊勢清貴氏
いせ きよたか:トヨタ自動車専務役員、1955年生まれ。1980年3月京都大学大学院精密工学科修了後、トヨタ自動車工業(現・トヨタ自動車)に入社。新車開発に携わり、「RAV4」の開発責任者。2007年常務役員、2011年からレクサス本部本部長、Lexus International Presidentを歴任。2013年、取締役専務役員。技術開発本部とモータースポーツ本部の本部長を兼務。2016年4月、先進技術開発カンパニーPresidentとChief Safety Technology Officerを兼務。

伊勢氏:「2050年にはガソリンやディーゼルのエンジン車の販売はほぼなくなる」。2015年10月にトヨタ自動車が開催した環境フォーラム2015で私がこう発言したことは波紋を呼びました。

 私が伝えたかったのは、エンジン車が主役でなくなるのは間違いないということです。もちろんエンジン自体が完全になくなるわけではありません。ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車にも搭載され続けます。

 しかし環境問題への対応が求められる中で、エンジンのみを搭載するクルマの販売は大幅に減少するでしょう。だからこそFCVやEVなどに力を入れないといけないという意味で話をしました。

 環境対応車という意味では、トヨタ自動車が力を入れるハイブリッド車は累計販売が900万台を突破しています。普及は着実に進んでいますが、プラグインハイブリッド車やEVの普及台数はまだまだ少ない。現時点では、どのパワートレーンが主役になるのかは、分からない状況です。

 FCVに加えて、EV走行が主体でエンジンを使えば、長距離走行が可能なプラグインハイブリッド車があります。現在のEVは、電池性能の問題で走行距離に限界があり、大容量タイプの場合は充電時間もかかるため比較的小さなサイズのクルマに適用する方針です。

 一方、FCVは中長距離の移動に適しています。燃料である水素の充填時間も短時間で済みます。ただ水素ステーションなどのインフラ整備はまだまだです。さまざまなパワートレーンにそれぞれに一長一短があります。

 ですからトヨタ自動車はハイブリッド車に加えて、プラグインハイブリッド車、FCVなどを開発して製品化しています。EVも小型で近距離移動を想定して開発しています。重要なのはクルマの全体的な環境性能を高めていくことです。

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