ブランディングとは価値の可視化・外部化であり、付加価値の創出とは表裏一体のものだ。しかし、その価値に実態が伴わなければ、ブランドもまたフェイクに過ぎなくなる。後半はブランディングの手法と考え方を通して、「価値」のあり方を探る。価値とはいうまでもなく「自社利益」ではない。では何なのか。グラフィックホールディングス代表取締役の山本壮一氏の言葉からにじみ出てくるのは、自社利益を棚上げにした、その先にある「価値」だった。

この先の4〜5年で大きく差が付く

三反田 こうやってお話を伺うと、やはりアウトバウンド、インバウンドが話題として出てきます。特にインバウンドに関しては、2019年のラグビーワールドカップ(W杯)、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、この4〜5年が勝負かなと感じているわけなんですけども、山本さんの中では、これからの4〜5年、チャレンジしたいこと、準備していること、考えていることはあるでしょうか。

山本 壮一(やまもと・そういち)。グラフィックホールディングス代表取締役。1980年、北海道札幌市生まれ。札幌国際大学観光学部卒。旅行業、観光学、北海道の観光資源について学ぶ傍ら、在学中にデザイン会社を起業。2005年にノースグラフィック設立。2015年に純粋持ち株会社 グラフィックホールディングスを設立。5社10事業部から成るグループとなる。
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山本 東京オリンピックまでに、今、地元の北海道を中心に手掛けているインバウンド需要に向けた施設を日本全国に展開することが当面の目標ですね。その皮切りは、ラオックスと提携して出店したキャナルシティ博多内の店舗です。

三反田 キャナルシティ博多のラオックスですか? すごいよ、いや、すごい。だって、あの店には中国から船で観光客が買い付けに来るんですよ。それ絶対にお客さんが入るわ。

山本 これをきっかけにシナジーを起こすことのできる会社とタイアップして、全国展開したいなと。それと、自社で運営しているインバウンド専門の飲食店も、客層が違うので別軸で全国展開したいと考えています。

三反田 今の北海道はアジアからの観光客が多いじゃないですか。でも、大きなスポーツイベントがあるので、これからはアジア以外の欧米系の客層も多くなりそうですけど、その辺はどうですか?

山本 いや、実はアジアのインバウンドブームが来る前に、自社のバーやレストランはニセコをはじめとした欧米系の観光客が対象だったんですよ。だから社内でも英語を話せる社員もいますし、欧米客の方が対応が進んでいます。

三反田 なるほど。

山本 でも、北海道という広いくくりでみると、実はニセコ以外では、ほとんどそういう対応ができていないと思います。メニューですら英語対応していない店が9割を占めていますね。「セカイメニュー」(ウェブ上のメニュー翻訳サービス。約30言語に対応)のようなサービスはあるけれど、やはりIT(情報技術)リテラシーが低いお店も多いんです。「とりあえずお店のウェブサイト開設しておけばいいんでしょ」程度で、新しいサービスに対してすごく消極的なんです。

 たぶんこの先の4〜5年で、ITを使った多言語化に対応できたところ、できなかったところで大きく差が付くんじゃないかと思います。なので、お付き合いのある顧客には、当社のIT事業部のノウハウを提供して、リテラシーを向上してもらって、インバウンドへの対応力を上げていきたいと思っています。

北海道最大級600席のビュッフェダイニング伝の店内(写真:グラフィックホールディングス)
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三反田 海外に行ったとき「日本に足りないなあ」と思うのは、まずWi-Fi(無線LAN)、それから多言語化。タクシーに乗っても、運転手さんが英語を話せないことが多いじゃないですか。IT化で多言語化しても、道順や時間、料金などやっぱり口頭で確認したいことがあるわけですから、その辺はがんばってほしい。

 それと、日本はインフラが整いすぎていて、逆に目的地にたどりつけない。特に都会は私鉄やJR、地下鉄、バス、タクシーなど公共交通機関が何でもそろっているので、「どれを使ってどう行くのがベストなのか」がすごく分かりにくい。例えばフィリピンなんて、電車がないから、移動手段はバスかタクシーしかない。そのどちらかで最短、最安などの基準で選べばいいんですけど、日本は、どれがベストか、ホテルのフロントで聞いてもよく分からないことがある(笑)。

 日本は今、そんな状況で、今後、4〜5年でやらなければならないことがいっぱいあるんですが、それは企業の海外進出でも同じです。今後は、日本の商品やサービスをライセンスして海外企業が現地で展開するようなことも増えていくのではないでしょうか。そのときに大切なのは「ブランディング」だと思います。そこで改めてお聞きしたいんですけど、ブランディングの支援を手掛ける企業として、何かコツというか、ポイントはあるんでしょうか。

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