車両が検知した物体と自車との衝突可能性を判断し、減速(停止)制御を行うシステムである、自動車用予防安全技術の「衝突被害軽減制動制御装置(AEBS)」。AEBSは交通事故防止につながる有効な手段として、また将来の自動運転車実現に向けた要素技術として注目されている。AEBSについて、市場シェアの推移や、特許出願動向などを調査したところ、AEBSに向けて日独で熾烈な研究開発競争が行われていることが分かった。技術別に特許出願を分析すると、日本は認知技術について多く出願している一方、ドイツは通信やその活用など、より高度な技術で先行していることが見えてきた。日本は今後、自動化レベルの上昇を見据え、通信による認知技術の研究開発と権利確保を促進していく必要がある。

 自動車用予防安全技術とは、事故が起こる前に運転者の安全運転を支援し、事故を未然に防ぐための技術を指します。日米欧において交通死傷事故のほとんどは自動車による事故であり、事故件数の多さ、被害の大きさは社会問題となっています。この社会問題に対し、自動車用予防安全技術の「衝突被害軽減制動制御装置(AEBS:Autonomous Emergency Braking System)」が市場投入され、現在市場を拡大しつつあります。AEBSは、検知した物体と自車との衝突可能性を判断し、衝突可能性がある場合には車両が減速(停止)制御を行うシステムです。さらに、AEBSは今後、自動運転を実現するために不可欠とされます。危険時にブレーキによって車両を確実に止める、あるいは、スピードを落とすことが交通死傷事故を減らす上で最も重要な技術となるからです。自動車関連産業が強い日本にとって、今後も高い競争力を維持していくためにはAEBS関連技術を押さえておくことは欠かせないといえます。

 こうした背景から、特許庁は「平成27年度特許出願技術動向調査」において、自動車用予防安全技術の特許出願動向などを調査し、当該技術の現状を明らかにしました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)はこちら)。この調査の主要部分を本稿で紹介します。

 本調査で対象とした技術を図1に示します。本テーマでは、自動車用予防安全技術のうち、自動ブレーキ制御技術に関連する技術を調査対象としました。特に、車両が制動力補助や自動制動を行うことで事故予防や事故被害軽減に寄与することから、AEBSが主な調査対象となっています。AEBS は主に、(1)自動車に搭載されたセンサにより車両周囲の状況を認知する「認知技術」、(2)衝突可能性などを判断する「判断技術」、(3)判断技術によって生成された情報に基づき制動などの操作を行う「操作技術」の3要素を含みます。特許出願動向の調査では、これら3要素を考慮した上で分析しています。

図1調査対象範囲(技術俯瞰図)
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