メンタルの不調をアプリで改善する

「こころの健康」にフォーカスした海外スタートアップ事例

2018/05/09 09:00
佐竹 晃太=内科医、キュア・アップ代表取締役

 皆さま、こんにちは。キュア・アップの佐竹晃太です。本連載では、モバイルテクノロジーによる新しい治療アプローチの可能性や先進事例を紹介しています。前回は「モバイルバイスで頭痛を緩和!?」と題し、日本でも悩みを抱えている人が多い頭痛に対してモバイルテクノロジーでソリューションを提示する海外スタートアップ事例を紹介しました。今回は、モバイルヘルスを使ったメンタルヘルスの治療を提案している米国スタートアップ事例を紹介します。

認知行動療法に基づくアプリ

 米Ginger.io社は、スマートフォンでの行動分析に基づくサービスを提供しています。専用アプリをダウンロードすると、カウンセラーと無料の相談ができ、それを経て実際にどのような方法でケアをしていくかを決定するサービスです。

Ginger.io社が提供するアプリのイメージ(写真:Ginger.io社のホームページから)
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 既に、世界150カ国で教育サービスを提供している企業において、社員への福利厚生として扱われています。企業が提供するEAP(従業員支援プログラム)の強化策として認知されてきているようです。

 さらに、米国平均の2倍近くの抗うつ剤が処方され、自殺率が非常に高い特殊な地域であるユタ州の地元クリニックとも連携しています。精神疾患患者など500人を対象にサービスを提供しており、こうした活動も注目を集めています。

 米国シリコンバレーとフィンランドに拠点を置くMeru Health社は、メンタルヘルスで苦しむ患者に対して、認知行動療法という「認知」とそこから導かれる「行動」の面から改善へとつなげる心理学的アプローチを採用しています。具体的には、認知行動療法に基づくアプリで、8週間のプログラムを提供しています。

Meru Health社が提供するアプリのイメージ(写真:Meru Health社のホームページから)
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 このアプリとカウンセリングを通して、86%の参加者が無事に8週間のプログラムを終了したり、75%の参加者のメンタルヘルスの症状が約20%、もしくはそれ以上減少したりと一定の効果を見せているようです。

ハードルを下げ、早期の介入や支援に

 世界保健機関(WHO)は、世界のうつ病患者数は約3億人以上、そのうち年間約80万人が自殺していると発表しています。こうした状況を受け、2013年5月に行なわれた第66回WHO総会では、メンタルヘルス・アクションプラン(以下、アクションプラン)2013−2020が採択されました。

 アクションプランは、精神障害の予防、そして精神障害を有する人々の死亡率や障害を低減することを目標としています。2020年までに、世界の自殺死亡率を10%少なくするという目標を示し、その達成状況を期限までに行われる総会にて報告することとしています。

 米国の医療情報サービス企業であるWebMD社は、うつ病が適切な方法で診断されない場合、患者がアルコールや薬の依存症になる危険性を提示しています。うつ病になる前の初期段階で予兆の認識や適切な介入や支援があると、80%以上の患者はうつ状態から適切に対処できると考えられています。

 日本でも自殺者総数は3万人近くまで達しているとされています。近年でも、業務の負荷が原因となってうつ病を発症し、さらには自殺にまで追い込まれてしまった労働者の事例が大きく取りざたされたり、労災認定件数も大きく増加したりしているなど、その動きは関心を集めています。こころの健康はとても繊細で取り扱うのが難しい病です。

 今回紹介したような、スマートフォンアプリを使ってメンタルヘルスの不調を改善するサービスは、メンタルの問題で悩む人の負担の緩和や、そもそも治療に取り組むハードルを下げることができるのではないかと思います。早期の介入や支援の一助になるのではないでしょうか。日本でもモバイルヘルスを通したメンタルヘルスケアの取り組みが広がることを期待します。