死者の都市計画

山口 翻って日本を見ると、ヨーロッパのようにきちんとした法令はない状態が今も続いていますね。人間の尊厳という観点からすると大変な欠陥だと思いますけど、いかがですか。

大石 そういうことも言えるでしょう。企業は浮き沈みがあって、墓地の経営というか設置主体にはなり得ない。だから、本来は自治体が主体になるべきと思うのですが、法律にはそんなことは一切書いてありません。

山口 書いてないのですか。

大石 実際、個人名義の墓地を除くと、墓地を提供する役割の大部分は寺院が担っている格好になります。自治体が積極的に墓地を設置する動きがない代わりに、お寺に任せているわけです。ではヨーロッパ的なモデルで作り替えられるかというと、そこは難しい。とはいえ、そこを何とか日本なりのやり方できちんと仕組みを整えた方がいいのではないかと思います。

山口 そうですね。寺院に入れない人に対する救いがないですよね。

大石 ありません。しかも、墓石にしても墓地にしても、高価でしょう。公営墓地に申し込む人は多いのですが、そもそもの募集が少ない。例えば京都市では毎年募集は出ません。

 それから、墓地を公園として扱うという感覚もありません。東京だと多摩霊園などきれいな緑地がありますが、一般には迷惑施設のような受け止め方をされるのでなかなか新設できない。だから墓地は大事だと思いながら、なかなか思うようにいかない状況だと思います。

 墓地を公園として整備するとなれば国土交通省の管轄になってくるので、省庁間の権限争いみたいな話にもなりかねません。そういう意味でも、最初は死者の尊厳というところから始まったわけですが、都市計画などさまざまな分野にまたがってきます。

山口 ちなみに、フランスではどこが管轄しているのですか。

大石 法律で定めているのは実は内務省です。ですから、日本で言うと地方自治法のような法典の中にびっしり書いてあります。あとは自治体に任せることになります。

山口 それは美しい。

大石 美しいというのは言い得て妙ですね。

山口 少なくとも厚労省ではないですね。

大石 フランスでは、墓地の管轄は都市公園課です。だから意識を持ってきっちり整備されるので、社会の受け止め方が全く違います。

山口 日本もいずれ国交省が管理するようになればいいと思います。

大石 これまでは、土葬中心の時代からの伝統で、ずっと厚労省の管轄でした。統計資料も全て厚労省が取っています。死亡診断書や埋葬許可証は厚労省で把握しやすいからということもあるのでしょう。

(構成は、片岡 義博=フリー編集者)