柩は必ず朽ちるように作る

山口 ヨーロッパでは行政が責任を持ってお墓を用意する期間は何年ぐらいでしょうか。

大石 使用期間の設定があって、例えばフランスでは最低10年です。これはひつぎの中の遺体が完全に分解する期間に相当するようです。あとは30年、50年、永久といった使用権を特別に与えます。

山口 使用料はいくらぐらいでしょうか。

大石 パリの墓地条例を見ると、永代使用で1m2当たり7340ユーロぐらい(1ユーロ=136円換算で約100万円)。10年使用だと一番狭いもので400ユーロ(5万4400円)もいかない。パリ市内と郊外では、値段がやっぱり違います。一番遠い墓地の区画だと100ユーロ(1万3600円)です。お墓に番号が付いているからすごく管理しやすい。親族が全く来ずに一定の期限が過ぎ、催告にもなしのつぶてのときは掘り返します。ただ本当にお金のない人はどこかに用意して5年間は必ず埋めてあげる。

山口 自治体に義務があるということはホームレスが亡くなって完全に無縁仏になったとしても、市はちゃんと責任を持ってやるということですね。

大石 そうです。日本でも「行旅死亡人」といって、名前も住所も分からなければ市町村長の責任で官報に公告を出します。誰も身寄りがいなくても、市町村が葬ってあげるシステムです。

山口 葬るといっても火葬してそこまでですよね。

大石 基本的にそうです。ヨーロッパの場合、お金の面も安心ですし、トータルの面でもきっちり世話するという話になっているのです。

山口 日本では、お墓を買おうと思うと、墓石料と永代使用料で全国平均約200万円ですね。ぼくは彼岸の日に青山霊園(東京・港)の長岡半太郎の墓を参った後、すぐに都営霊園の応募をしておきました。まず巡ってこないと思いますけど(笑)。

大石 日本の場合、公営墓地を1回買えばその区画を永久に使えるわけで、10年、20年といった期限は付いていないですね。本来、公の土地なのに、それをずっと私人が使えるシステムは矛盾しています。

 一方、例えばパリのペール・ラシェーズ墓地は使用権の設定が3万5000ユーロ(476万円)とすごい額で、そこの認められた1区画に何人も入るわけです。それからヨーロッパでは、ひつぎそのものは必ず朽ち果てるように作らなければならないのです。

山口 ああ、なるほど。石とかでは作れない。

大石 朽ち果てると崩れていくので、その上に新しいひつぎを載せます。そうすると、一区画にかなりの数が納まっていくことになります。

山口 例えば10年経って完全に骨になっているとして、次の番の人が来ますよね。その骨はどうするのですか。

大石 骨は集めて別の場所に置くか、掘り返して共同の壁みたいな所に埋めます。壁そのものは大した容量ではなく、日本でいう骨つぼほどの大きさですが、少し奥行きがあります。入り口には必ず「死者の尊厳を守るために静かにしてください」と書いてありました。

山口 そうか、やっぱりそこでお花見とかしてはいけないのか(笑)。

大石 確かに誰もいなかったですね。まだ寒かったせいもありますが(笑)。