山口  今でも土葬の方はいるのでしょうか。

大石 2013年の統計では380人が土葬になっています。

山口 ということは、土葬も許されていることがあまり知られていないのですね。

大石 特に規制はありません。ただ、何らかの形で埋葬してくださいというだけです。これがヨーロッパになると埋葬してくださいではなく、自治体が埋葬してあげる義務がある。

山口 そのことに大石先生は2011年の春以降に気付かれたのですね。それまでは法律家にも知られていない。

大石 一部の専門家以外には知られていませんね。特に憲法などの公法学者が気付いたのは本当に最近のことでして、だったらその仕組みをきちんと調べてみようと考えたわけです。

山口 それを憲法学者がやるのはなぜでしょうか。

大石 憲法13条には幸福追求権や人権の尊重がうたわれています。しかし、我々は生きている時だけに尊厳があるわけではなく、死者にもそれなりの尊厳がある。その積み重ねが歴史になるのです。3・11ではそれがごそっと流されてしまった。印象的だったのは、被災者が先祖のお墓などを見つけて「ああ、よかった。家のお墓が見つかった」と語っておられる映像です。それは人間の原風景として大事なことなのだなと再認識しました。

 生きている人の尊厳を唱えるのも大事ですが、同様に亡くなった人に対しても敬意を払うべきだという考え方は外国でも共通です。例えば、フランスなどでは民法を改正し、死後も生前と同じ尊厳が認められています。

パリの西部近郊ヌイイ=シュール=セーヌ(Neuilly-sur-Seine)にあるルイ・ドゥ・ブロイの墓
パリの西部近郊ヌイイ=シュール=セーヌ(Neuilly-sur-Seine)にあるルイ・ドゥ・ブロイの墓

山口 ヨーロッパが昔からそういう状態にあったわけではなく、どんどん法律が改正されて、死者にも人間の尊厳を与えるという流れになってきたのですか。

大石 そうですね。ただ死者の尊厳というものは、本当はないはずで、それは実際には死者に向けるわれわれの気持ちの表れなのです。われわれ自身が死者を大事なものだと思えば、必然的に故人をどう取り扱うかについてきちんと整備しておかないとまずいということになるわけです。