IFAで見たウエアラブル最前線、実用性とファッションが両立

IFA 2015見聞録前編

2015/09/16 00:00
柏尾 南壮=フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ

 ドイツ・ベルリンで開催された国際家電見本市「IFA 2015」(2015年9月4日~9日)に参加してきた。IFA 2015には世界中の家電メーカーが集結し、数多くのモバイル機器を発表、あるいはリリース直前に参考出展する。そこで今回と次回は特別編として、広大なベルリン見本市会場からのIFA 2015見聞録をお届けする。

健康機器はおしゃれになると使用率は3倍に

 医療機器として認証を受けたウエアラブルタイプの心拍計や血圧計を手がける米Qardio社。同社の市場調査によると、外観がおしゃれになるだけで機器の使用率は3倍になるという。病気を意識させる陰気な雰囲気をいかに払拭するかが、医療用の計測機器が成功できるかどうかの鍵を握るというのだ。

 Qardio社のカウンターで女性が手に取って見せてくれたオシャレなポーチの正体は血圧計。価格は129ユーロだ。

血圧計とは思えないおしゃれな外観。病気だと思わせないことが使い続けてもらう秘訣だという
血圧計とは思えないおしゃれな外観。病気だと思わせないことが使い続けてもらう秘訣だという
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 通話専用というイメージが強いBluetoothの無線ヘッドセット。出荷数は多いものの、運転中などのハンズフリー通話以外ではイマイチ普及していない。米Clip & Talk社のブースでは、加速度センサーを内蔵して活動量計にもなるヘッドセットが展示されていた(リリース前ということで写真撮影禁止)。計測精度は98%で、医療機器としての認証も受けたという。4Gバイトのフラッシュメモリーを搭載し、音楽データの保存も可能。USB端子を使って、パソコンなどから充電する。

 ヘルスケア機器とモバイルの融合で知られる米iHealth Lab社。同社は省電力と廉価を維持するためディスプレーは積まず、無線も極力使用しない製品を開発・販売する。ブース担当者によると、これだけで30~50米ドル程度のコスト削減効果があるという。医療費増大は世界共通の課題。20米ドル以下で販売されている同社の血糖値計「Align」は、国として医療費抑制を掲げるイタリアで最もよく売れているらしい(関連記事「ランチ1食分のお手軽価格、スマホ連携でコストを抑えた血糖値計」)。

本物の短針と長針を使った腕時計型活動量計

 アナログ時計の人気は不動だ。オーストリアRuntastic社の腕時計型活動量計「runtastic MOMENT」の文字盤は、アナログ時計と同じように本物の短針と長針で構成されており、これにスモールセコンドに相当するゲージも付いている。歩数目標の達成度などの活動量は、Bluetoothで接続したスマートフォン(スマホ)に表示する。本体は液晶または有機ELをいっさい使っておらず、デジタル要素を完全に消し去っている。

外観は完全なアナログ時計。活動量計としての測定結果はBluetoothで接続したスマホに表示される
外観は完全なアナログ時計。活動量計としての測定結果はBluetoothで接続したスマホに表示される
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 アナログ時計らしさを追求しているのはフランスnevo watch社のnevo watchも同様だ。短針と長針だけのシンプルなつくりで、時間以外何も表示しない。活動量はBluetooth経由でスマホなどへ転送する。バンドもおしゃれなものを多数用意しており、本体の魅力を高めている。

長針と短針だけの超シンプルなスマートウォッチ。活動量計として加速度センサを備えており、一日の歩数や消費カロリーなどをスマホで確認する
長針と短針だけの超シンプルなスマートウォッチ
活動量計として測定した1日の歩数や消費カロリーなどはスマホで確認する
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 皮製品の老舗、デンマークDbramante1928社はApple Watch用のレザーバンドを展示していた。米Apple社が標準で用意しているバンドよりおしゃれだ。

Dbramante1928社は伝統ある皮製品メーカー。Apple Watchをドレスアップするバンドを展示していた
Dbramante1928社は伝統ある皮製品メーカー。Apple Watchをドレスアップするバンドを展示していた
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 米LUNATIK社もApple WatchやiPhoneの専用ジャケットを手掛けている。樹脂ジャケットから航空用アルミを用いた耐衝撃ジャケットまであり、“一味違う”Apple Watchを演出する。iPhone用のジャケットは装着するだけで防水対応となり、万一の水没でも安心だという。

LUNATIK社はApple Watch本体に被せるジャケットとバンドを制作。iPhone用の防水ジャケットも販売する
LUNATIK社はApple Watch本体に被せるジャケットとバンドを制作。iPhone用の防水ジャケットも販売する
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 スイスKronoz社(ブランド名はMYKRONOZ)のスマートウオッチはゴージャスだ。女性を意識したと思われる全体に金メッキを施したブレスレットタイプなど、少々重たいことを除けば、ファッションアイテムとして認知されるレベルに近付きつつある。少数ではあるが、SIMカードを内蔵し、単体で電話ができるモデルも2機種あった。

ドレスに映えるゴージャスなデザイン。これからはデザインが普及のカギになるというのが多くのメーカー担当者の意見
ドレスに映えるゴージャスなデザイン。これからはデザインが普及のカギになるというのが多くのメーカー担当者の意見
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 中国Lenovo社の傘下となった米Motorola Mobility社。円形ディスプレーで話題を呼んだスマートウオッチ「Moto 360」の第2世代機は、ディスプレー直径の大小が選べるようになったほか、色のバリエーションも増えた。こちらもおしゃれ感満載のゴールドバージョンがあった。

Moto 360の第2世代は大小2サイズ。時計らしい文字盤デザインの中からお気に入りを選択可能。色のバリエーションも増えた
Moto 360の第2世代は大小2サイズ。時計らしい文字盤デザインの中からお気に入りを選択可能。色のバリエーションも増えた
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 韓国LG Electronics社のスマートウオッチ「LG G Watch」の次世代版は、外観は先代と余り変わらないが、バンドがレザーになり、高級感が増した。メタリック調に加え、やはりゴールドバージョンが登場している。

 中国Huawei Technologies社のスマートウオッチ「TalkBand」の第2世代は、本体脇のボタンを押すと、ディスプレーを含む本体からリストバンドが外れて、通信機能を持つ本体部分はそのままBluetoothヘッドセットになる。時計機能も気合が入っている。円形ディスプレーに加え、ステンレスからアルミ、ゴールドまで4モデルがある。ゴールドは本物の金が使われているわけではないが、美しく、見栄えもする。価格は399から450ユーロだという。

スマートウオッチとヘッドセットが合体。脇のボタンを押すと本体部分が分離し、ヘッドセットとなる
スマートウオッチとヘッドセットが合体。脇のボタンを押すと本体部分が分離し、ヘッドセットとなる
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 米GARMIN社はスマホも少数リリースしているが、主力事業はナビゲーションとスポーツに特化した製品である。同社の製品はLTEなど高速通信を必要とするスマホとのリンクはほとんど想定しておらず、製品単体で完結する構成になっている。キャンパー用、バイク用、また防水・防塵・耐衝撃のナビゲーションシステムが多く展示されていた。

自転車やバイク搭載型の耐衝撃・防水タイプのポータブルナビ。GARMIN社はナビゲーションやスポーツに関連する製品に注力するという
自転車やバイク搭載型の耐衝撃・防水タイプのポータブルナビ。GARMIN社はナビゲーションやスポーツに関連する製品に注力するという
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 高級カメラ用レンズで有名なドイツZEISS社は、没入型のヘッドセットを展示していた。筆者も体験してみたが、表示される十字線をビーチなどに表れるターゲットに合わせるゲームが展示されていた。少し酔ってしまうのはやむを得ないか?

 枯葉や落ち葉で詰まる雨どい。これを掃除してくれる機器が、お掃除ロボット「Roomba(ルンバ)」でお馴染みの米iRobot社から出品されていた。雨どいに機器をどうやって乗せるのか、掃除が終了した後はどうなるのかを尋ねたところ、担当者は笑いながら「詳細は秘密」とだけ答えてくれた。よく分からないが、屋根瓦と雨どいがある日本では重宝するのではないだろうか。雨に打たれながら作業することを考えて、防水も万全のようだ。

 Garmin社と同じくナビゲーション機器やアクションカメラ製品を展開するオランダTomTom社。同社のスマートウオッチは、大容量フラッシュメモリーに音楽データを格納し、スマホがなくても音楽が聴けるようなっていた。

 中国Xiaomi社のグループ会社であるXiaoyi社は、アクションカメラを円形やボール状にした全方向が撮影可能なライブカメラを出品していた。かなり重たく実用性には疑問符が付くが、このような製品を出品しているのは同社だけだった。

 会場内では、フランスAwabot社のロボットが別の企業のロボットと偶然鉢合わせするところを見る機会があった。AwaBotのロボットは数台で、オペレーターがオンラインで操作する。他社の1台も同様と思われるが、その1台の表示内容をみんなで取り囲んで「あ~でもない、こ~でもない」と井戸端会議をやっていた。今回のIFAの最も印象的な光景の1つである。

偶然に発生した2社のロボット同士の井戸端会議
偶然に発生した2社のロボット同士の井戸端会議
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<9月24日公開のIFA 2015見聞録後編へ続く>

柏尾 南壮(かしお みなたけ)
フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ ディレクター
 1974年タイ・バンコク生まれ。1994年10月にフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズを設立。顧客の多くは海外企業。文系から理工系まで業務の守備範囲は広い。文系の代表作は1999年までに制作された劇場版「ルパン三世」各作品の英訳。主力の理工系では、情報通信機器からエアコンまで多種多様な製品の分解調査や分析、原価計算を行う。移動体通信を利用したビジネスモデルの研究に携わり、モバイル広告関連技術である日本特許第4729666号の発明者。
 著書は「iPhoneのすごい中身(日本実業出版)」「スマートフォン部品・材料の技術と市場 (共著・シーエムシー出版)」。日経エレクトロニクス誌への寄稿のほか、日経BP社主催セミナーでの講師も行う。