エレクトロニクス業界でプリンタブル・エレクトロニクス(プリンテッド・エレクトロニクスとも呼ばれています)が話題になるようになってから、もう10年以上が経ちます。この間、多くの大学や研究機関、企業などで様々な新しい印刷技術が開発されてきています。導体の回路幅は10μm以下の極細線の印刷が可能になり、受動部品はもとより、トランジスタ、バッテリー、太陽電池、面状発光体などまでが印刷プロセスで形成できるようになっています。

LEDスイッチングパネルモジュール(米Screenprint/Dow社)
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 特に材料メーカー、インクメーカー、印刷機メーカー、その他のベンチャー企業の活躍が目立ちます。これらの先端技術に、RTR(Roll to Roll)の生産方式を組み合わせれば、低コストの生産が可能になり、これまでのシリコン半導体と銅箔を使うエレクトロニクス量産方式に置き換わるようなことが期待されています。

 ところが、実際に印刷技術を適用した電子デバイス、製品で、量産が立ち上がり、事業化に至っているものとなると、これといってまとまったものが見当たりません。その筋の集まりがあると、研究者や企業人の間では、ため息まじりの嘆き節が語られることが多いのが実情です。

 実は、メーカーはあまり語らないのですが、印刷エレクトロニクスには致命的な欠点が幾つかあるのです。まず、最初にあげておかなければならないのは、導体抵抗が大きいことです。それも2倍3倍どころではなく、二桁、三桁も大きいのです。特に導電性が高いと言われるインクを使っても、一桁(10倍)違うのです。これだけ違うと、回路全体が抵抗体のようなものですから、回路の設計の前提も変えざるをえません。

 2番目に考えなければならないのが、マイグレーションです。これは銀原子に特有の現象で、電位がかかっている銀の回路においては、銀原子が陽極から陰極へと移動するもので、特に高温多湿の環境で甚だしく、回路間で絶縁不良、短絡の故障を起こす原因になります。回路のギャップが小さいほど危険性が高まるのですが、微細回路用のナノインクメーカーは、ほとんどマイグレーションについて言及しません。

 3番目の問題として、印刷で形成される電子回路は、本質的に高周波回路としては使えないということが挙げられます。

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