2016年8月24日付の日本経済新聞朝刊「4~6月期決算番付」という記事が、為替差損額を取り上げている。ここのところの円高基調によって為替差損が膨らんだ企業が多いという内容だ。

 為替差損とは、外貨建ての債券(売掛金など)を自国通貨で受け取ったり、外貨建ての債務(買掛金など)を自国通貨で支払ったりする際に発生する損失のこと。為替差損が大きかった企業の上位には日産自動車、任天堂、トヨタ自動車などが並んでいる。輸出型製造業で特に影響が出た格好だ。

 一方、日産などと同じく輸出型製造業の自動車メーカーでありながら、富士重工業は為替差益を出している。記事によれば、その理由は実勢よりも円安水準の為替予約にあったという。

 今回は、為替変動が業績に対してどのように影響を与えるかについて解説する。

まず売上高と仕入高が影響を受ける

 日本経済新聞の今回の記事は為替差損益だけに焦点を当てているが、為替変動の影響は為替差損益以前にまず売上高と仕入高に出る。

 米国に輸出するケースを考えると、現地での販売は当然のことながら米ドル建てとなり、売上高は米ドル建てで発生する。しかし、それを日本企業が自社の会計情報として計上する際は円建てに変換する。1つの財務諸表に異なる通貨を混在させることはできないからだ。

 このときに為替レートの影響が出る。例えば、米国における売上高が1000米ドルのとき、為替レートが1ドル100円だとすると、日本企業が計上する売上高は10万円(=1000米ドル×100円/米ドル)となる。

 ところが、為替レートが1米ドル99円になると、米国における売上高が同じ1000米ドルだとしても、日本企業が計上する売上高は9万9000円(=1000米ドル×99円/米ドル)となり、1000円の減収となる。

 1円の円高が売上高にどれほどの影響を与えるのか、ざっくり試算してみよう。日産自動車の2016年3月期を例に取ると、連結売上高約12兆円のうち82%の10兆円弱が海外での売上高となっている。海外売上高のすべてが米ドル建て、販売時の為替レートが1米ドル100円だったと仮定とすると、現地でのドル建ての売上高は1000億米ドル(=10兆円÷100円/米ドル)となる。

 これが1米ドル99円だったとすると、1000億米ドルの海外売上高は日本円では9兆9000億円(=1000億米ドル×99円/米ドル)となる。1円の円高で1000億円も売上高が減少するのである。

 輸入であれば、これと逆のことが起こる。輸入した原材料が1000米ドル、為替レートが1米ドル100円だとすると、日本企業が計上する仕入高は10万円(=1000米ドル×100円/米ドル)だ。これが1米ドル99円だったとすれば、日本企業が計上する仕入高は9万9000円(=1000米ドル×99円/米ドル)となり、1000円のコスト減となる。

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