脳波計の固定概念を覆す、検査からモニタリングへ

2019/01/04 07:00
久保田 博南=ケイ・アンド・ケイジャパン 代表取締役社長(医工連携推進機構 理事)

 脳波計といえば「脳波を連続測定する検査機器」という概念が付きまとう。しかし最近、固定観念を覆す新たな機種が登場した。今回は脳波というパラメータに対して、新しい切り口で脳機能の診断が可能になった装置について紹介する。

脳波から読み取れる情報に変化が

 脳波を初めて測定してから90年程度の時間が経過した。これまで脳波測定といえば、「多チャンネルの誘導により」「脳波を長時間にわたって単純に測定し」「実時間で記録する」というのが、基本的な診断法の定番だった。

 ペーパレス化によって記録媒体を経由し、短時間で自動診断可能な装置の実用化などが進んでいる。しかし、膨大な脳波の生データから異常波を見つけ出す手法について、大きな変化があったわけではない。

 それが最近になって、脳波記録法の中でも「aEEG」(Amplitude integrated EEG:振幅圧縮脳波)と呼ばれる手法が開発された。しかも新生児の脳波診断などに有効なことが分かってきた。これまでの脳波の周波数成分を主体とした解析に対し、それぞれの周波数帯の振幅や時間変化に注目が拡張され出した。

 注目すべき点は、これまで実時間としてモニタリングされてきた脳波パターンを、時間圧縮によって統合的に観察する手法である。一次パラメータとしての実時間脳波という点では同じだが、時間圧縮した波形を俯瞰的に眺めることによって、例えば潜在的な「背景脳波」と呼ばれる分野などにも光を当てることができる。

 これまでの突発的な異常波だけに注目されてきた状況から変化が出てきた。特に未熟児の潜在的なてんかんの検出が可能なことが明らかになっている。従来からの実時間モニタリングでは不可能な、予測的な診断による治療が行えるようになる意義は大きいだろう。

脳機能のモニタリングが可能に

 aEECによる基礎理論は、古くは1960年代から知られてきた。しかし、この理論を実用化する研究が進んだのは1980年代になってからで、スウェーデンのWestas医師らによるものだった。その後、今世紀になって初めて、実用化レベルの機器が開発された。しかし本格的な実用機の商品化と、その普及にまでは至らなかった。それが最近では日本にも海外製品が輸入されており、新機種の導入も始まっている。

 2018年秋にPMDAから承認を取得した米国Cadwell社製の脳波計「Arc Essentia」(輸入元はIMI社)の従来品との大きな違いは、EEGの生データを圧縮脳波aEEGに変換して長時間モニタリング機能を充実させたことにある。

米国Cadwell社製の脳波計Arc Essentia(写真:IMI社)
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 Arc Essentiaの表示画面を見ると、圧縮波形が主体で生データは補完的な表示にとどまっていることがわかる。aEEGをはじめ、振幅変化のみを表示する「エンヴェロープトレンド」、さらには脳の左右半球を比較するための「両半球エンヴェロープトレンド表示」も可能である。また、脳波の周波数帯域に注目した「スペクトログラムトレンド」の表示ができるため、脳波の性質別の定量変化が確認できる。「EEGトレンドグラフ」と呼ぶのが適しているかも知れない。

Arc Essentiaの表示画面の例(写真:IMI社)
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 脳機能の長時間モニタリングによって、急性期の患者の脳機能評価が可能になった。睡眠/覚醒サイクルはもとより、発作などで特定の閾値を超えた異常脳波を検知すれば、画面上にイベント検知ランプを表示することもできる。

 Arc Essentiaの主目的は、新生児集中治療室(NICU)における未熟児・新生児のてんかん発作予防、集中治療室(ICU)や循環器集中治療室(CCU)などのクリティカルケア領域での意識障害評価などである。このため従来からの脳波計を検査装置からモニタリング装置へ、また検査室から臨床の場へ移行させた新機種という捉え方ができる。

 脳波解析の進展はまだまだ可能と感じる。新機種の登場は、この分野でのパイロット的な任務を背負っていると言えるだろう。