Apple Watchの「ECG(心電図)」に見る、日米の差

FDA申請からわずか1カ月弱で認可

2018/09/26 07:00
久保田 博南=ケイ・アンド・ケイジャパン 代表取締役社長(医工連携推進機構 理事)

 2018年9月中旬に発表された米Apple社の「Apple Watch Series 4」。その中には、健康に興味のある人だけでなく、医療に携わる人たちにとってもひときわ注目すべきキーワードが含まれていた。「ECG(心電図)」だ。

 ECGといえば、心臓機能をチェックする中心的な測定項目である。つまり、「健康」を通り越して、「医療」の世界での検査を意味する。

FDA認可の直後に発表したApple

 今から115年ほど前の1903年。飛行機と同じ年に誕生した「心電計」は、心臓検査の中心的パラメータとして全世界で活躍し続けてきた。古典的という表現も当てはまるくらい、生体情報の中でも最もポピュラーなパラメータの一つといえる。

 それゆえに、ECGは「医療」との関連性において法的に規制されている。米国ではFDA(米国食品医薬品局)の認可が必要で、日本では薬機法による規制(クラスⅡ)の対象となっている。

 では、今回のApple Watchはどうなのか。FDA関連の情報を追跡してみたところ、下図のような認可レターが公表されていた。

FDAの認可レターの一部(赤丸は筆者が付記)
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 これによれば、Apple社に与えられた認可日は、2018年9月11日。品名は「ECG App(心電図アプリ)」で、内容は「Apple Watchに使用できるモバイル用を意図したソフトウエア」となっている。

 Apple Watch Series 4の発表日がこの2日後だったことを考えると、この認可を待って発表したとも推測できる。そうだとすれば、Apple社がいかに「健康・医療市場」に意識の矛先を向けているのかがうかがえる。

「日本でも利用したい」

 健康・医療市場への意識という点では、Apple Watchはこれまで「脈拍数」という機能が先行していた。しかし、ECGともなれば、この分野への「本格的な参入」を印象付ける。

 こうなると、「日本でも利用したい」との期待が膨らむ。ところが、今回の目玉機能であるはずのECGアプリは「本年末に米国で提供」という情報以外は明らかになっていない。

 ある程度予想はしていたものの、やっぱり…という落胆が大きい。実際、いつになれば日本で使えるようになるのか、さっぱり先が読めない。

 実は昨年(2017年)、Apple Watchの付属品として「KardiaBand」という製品が発売された。Apple Watchと接続すれば、ECGが取れるというふれ込みだった。ところがこのときも米国内のみの発売とあって、現地の友人に頼んで購入してもらったものだ。実際に使おうとしたが、アプリは米国での登録者だけと分かって、動かすことができなかった苦い経験がある。

 今回こそは、早く日本の薬機法をクリアして、我々の要望に応えていただきたいものだ。

申請日は2018年8月13日

 今回のECGアプリは、FDAに対してDe Novo-513(f)(2)というシステムにしたがって申請手続きが行われたようだ。これは、過去に類似品がない場合の申請方法である。

 本来だと、類似品がない新規品の場合、クラスⅢに分類されて、承認期間などを含めて大ごとになる。だが今回は、極めてスピード感を持った審査がなされたようだ。

 実際、今回の申請日は2018年8月13日。そして認可日が9月11日なので、その間わずか1カ月にも満たない。FDAというと「厳しい」という一般論もあるが、こうしたスピード感は日本でも見習うべきところだろう。

 本音を言うなら、「融通性」「法的緩和」といった精神も持ち込んでほしい。健康機器と医療機器が融合してきた昨今では、特にその弊害が目に付きはじめているからだ。「日本国内に類似製品が存在しない」だけの理由で、「第三者認証に当たらない(PMDAへの申請が必要)」という判断は、新たな市場の拡大向けた大きなバリアになってしまうはずだ。