医療機器の審査に「優先性」の考え方を求む

2015/09/09 00:00
久保田 博南=ケイ・アンド・ケイジャパン 代表取締役社長(医工連携推進機構 理事)

 先月末(2015年8月21日)、厚生労働省から海外で実績のある製品などに関しての早期導入支援策が発表になった。これまで業界団体などから強い要望として提案されていた事項だけに、本件に関しての“優先的”な進展を望みたい。

業界待望の支援事業始まる

 厚生労働省が同日に発表した政策は、「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する要望対象の拡大と要望の募集について」となっている。その趣旨をかいつまんで書くならこうなる。

 これまでも革新的な医療機器や医薬品に関して、昨年(2014年)から「先駆けパッケージ戦略」の名のもとに、必要性の高い機器類についての早期導入についての検討が続けられてきた。特に、欧米では使用が認められていながら、日本国内での未承認品についての迅速な実用化についての加速案が浮上していた。

 今回、新たに提示されたのは、この路線の延長上にある試みで、これまでは主に海外製品を対象としてきた政策を、国内製品についても拡大的に適用しようという前向きな取り組みと受け止められる。

 下図は、同省のサイトからの引用であり、以前との相違を明らかにした施策の概要が示されている。

以前との相違を明らかにした施策の概要
クリックすると拡大した画像が開きます

 この施策を待っていた企業はかなり多数に上るとみられるし、おそらく医療機器産業側からすれば、大いに歓迎するべき方向性だと受け止められている。なぜなら、せっかく開発した医療機器をどうやって早く売り出そうか考えるに当たり、法規制の面で暗礁に乗り上げている事例について審査側からの援助が得られそう、との期待があるからだ。

特定事業として終わらせることなく

 本来、海外で認可された機器は優先的に日本へも導入されるべき、という考え方はごく自然なものであり、とりわけこの議論をしなくてはいけない現状こそ異常だと感じている。その意味からすれば、何を今さらという気がしないでもない。

 いうなれば、なぜ今になって、こんな特別の支援事業を始めなければいけないのかという議論も成り立つ。通常の産業の常識からすれば、「優秀な製品が生まれれば良好な売れ行きにつながる」ことはごく自然な法則であるともに、それこそが自明の理でもある。

 しかしながら、医療機器の現状に限って言うなら、この法則に当てはめられていない。薬機法(医薬品医療機器等法)に名を代えた今も、従来からのこの問題を引きずったままの状態が続いている。つまり、「新規性」「高機能化」「高性能」をうたう製品や、海外での「既承認品」に対しての審査においては「優先性」とは全く逆で、むしろ「突破することに足カセを与えている」というのが現状だ。海外で普及している優秀製品であっても、頭から「新規品」として断罪するかのごとく、「認証品」などありえない、という空気が審査側にある。

 もし、薬機法を司る厚生労働省が、上記の事業を推進しようと本気で考えているなら、法そのものの中にこの施策や基本精神を取り入れるべきではないのか。薬事法から改正された薬機法においても、基本的姿勢において、総論賛成、各論反対という現況が一向に改善されない。これが現在の医療機器産業に突きつけられた、最大の難問といって差し支えない。

 長い目で見ても、優先的な医療機器が早く世に出て役に立つような法律に転換してほしいというのが、筆者の願望である。難しい理論は振り回さず、単純な政策からの現行法の前進的な改定を望みたい。最低限、申請書の項目に「優先性」を記述する欄を追加するべきではないのか。