微小血栓の検出へ、あくなき挑戦が続く

2015/09/01 00:00
久保田 博南=ケイ・アンド・ケイジャパン 代表取締役社長(医工連携推進機構 理事)

 脳血栓症などの重篤な疾病を招く因子として知られる血栓。この血栓を早い段階で検知する方法論には、長年の研究が続いている。にもかかわらず、理想的な検査機器の製品化は遅れているのが現状だ。本稿では、血栓を早期検知する実用化機器の開発事例から、その最新事情について報告しておきたい。

古幡博教授の遺志を継いで

 血管の塞栓症の要因を予知するためには、循環微小栓子(circulatory micro embolus)を早期に検知できるかどうかにかかっている。

 慈恵医科大学 医用工学研究室 教授であった故・古幡(ふるはた)博氏は、超音波診断・治療学の権威であり、長年ライフワークとしてこの研究開発に尽力してきた。その過程での主テーマが、血栓子検出装置の製品化だった。この開発過程の後半には、医療機器センターも共同開発機関として参画・サポートしてきた。

 本テーマは、経済産業省の平成23年(2011年)度課題解決型医療機器等開発事業としても採択され、3年間の国家プロジェクトとしての支援も受けた。事業自体は実証事業としての位置づけを基盤としており、「塞栓症原因となる微小栓子の検出力を向上した頸部超音波栓子検出装置の開発」というテーマ名のもとに遂行された。

 事業2年目の平成24年(2012年)8月、古幡氏が他界。その継続事業は、事業実施機関の橋本電子工業(代表取締役・橋本正敏氏)と慈恵医科大学、新潟大学などに引き継がれた。

 数多くの新規開発事業が並ぶ中でも、当テーマの成果はとりわけ高い評価を受け、2014年4月に「超音波頚(けい)動脈血流モニターHDK-BM001」として医療機器認証(クラスⅡ)を取得した。橋本電子工業が販売する製品のペットネームは、「FURUHATA」(FUtuRe Ultrasound HArmonic Thromboembolism Analyzer;未来型超音波血管塞栓症検出装置)だ。古幡氏の名が遺志として埋め込まれ、実用化への一歩を歩み始めた。

FURUHATAの概観
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「高い評価」のワケ

 「高い評価」と書いたが、なぜに?という理由を示しておこう。端的に表現するなら、これまでは「研究レベル」にあった課題を「製品化レベル」に引き上げたことに対する評価だ。

超音波センサー
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 その製品開発の勘所を探ってみると、いくつか核になる基礎技術が埋め込まれていることが分かる。右の写真は、頸動脈に装着する超音波センサーである。このセンサーの小型化が実用機としてのキーポイントとなる検出部で、30分程度で微小栓子の有無をスクリーニング可能とした。

 さらにもう一つの特徴は、小型ゆえに「非侵襲」であることだろう。つまり、これまでは経食道エコーなどでしか検査できなかった血栓子の有無を、モニタリング機能に近い長時間にわたって追跡する能力を備えている。栓子の解析能力は、新規に開発されたソフトウエアに依存しており、30μ~50μmの微小栓子の検出も可能とした。

 なお、それ以下の10μ~30μmの栓子も射程距離においている。将来の課題に関していうなら、現状でのシミュレータ、すなわち標的とするべきファントムを作りだす装置がそこまで追いついてゆけず、この領域での検出精度を確かめる方法がないことだ。

 栓子以外のバブルは「ノイズ」という位置づけになるが、その弁別もソフトウエアにより可能とした点が注目される。現状のままでも、これまでにない機能を有しており、スクリーニングという面からの貢献度は、大いに期待できる。従来の血液検査や超音波検査でしか測定できていなかったパラメーターに関して、スクリーニングやモニタリング可能という光明が差し込んだともいえよう。近未来においては、さらなる臨床評価が進み、検出精度においても比類のない機器に発展するよう切に願っている。