激減する医療機器の第三者認証、その実態と原因を探る

2019/02/26 06:00
久保田 博南=ケイ・アンド・ケイジャパン 代表取締役社長(医工連携推進機構 理事)

 我が国では、クラスII相当の医療機器を第三者認証に移行してから15年が経過した。この間に認証された医療機器は2万件弱にものぼる。だが、ここ数年の認証に関し、特異な傾向が見えるので、その実態に迫ってみることにした。

図1●医療機器の年間認証品目件数(ただし2018年は11月まで)
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実態を調査してわかったこと

 図1は、PMDA(医薬品医療機器総合機構)の認証品目リストに基づいて、筆者が集計した認証件数の年度ごとの推移である。作り上げてみて、かなりの特異的な傾向に驚きを禁じ得なかった。確かに、15年前の認証制度発足時には、第三者機関への移行が狙いどおりだったという面はあるかもしれない。しかしそれ以上に、当てが外れた事項も多々あるのではという推測が成り立つ。

 何といっても、発足3年目(2007年度)に2300件弱と4年目(2008年度)に記録した2500件を超える認証数の2大ピークが目を引く。これこそが第三者認証制度の定着を意味していたのだろう。新制度の狙いどおりと表現したが、それまでの厚労省直轄の承認制度を、クラスII主体のややリスクの低い医療機器に関して、大幅な普及を目指した方式に変換したと考えればよい。

 だが、それ以降、これらのピーク値の2000件台に戻ることがなく、減少の一途をたどる。しかも、発足10年後には、ピーク時の半分以下の1000件ほどの数字となる。さらには、直近の2017年度、2018年度は1000件を割り込むまでになってしまった。

 じつは、2014年には「薬事法」から「薬機法(略称)」への改正があった。このときのトピックス的な大変更は、「プログラム医療機器」という名で、ソフトウエアの申請も義務づけられたことだ。プログラム医療機器と名付けられた品目は、一般的名称として160以上あり、ほとんどがクラスIIの認証品ということも特徴的なできごとだった。

 この施策と関係があるかどうか疑問だが、一般的名称の増加に反比例してクラスII認証数が激減してしまった、とみることも可能だ。一般的名称の増加にもかかわらず、何らかの要因で、クラスII製品については「申請見直し」「申請躊躇(ちゅうちょ)」という傾向に走らせてしまった、という結果になっている。

課題噴出と混乱と

 もう少し冷静にこの課題の分析をしてみよう。2005年の改定で第三者認証制度を発足させた狙いの一つに、比較的リスクが少なくかつ大量に出回っているクラスII製品をさらに普及させることにあったと思われる。これらは一定の認証基準に合致しさえすれば、容易に認証され、いち早く市場に出回る条件を具備していた。つまり、汎用製品の類似品の拡大の推奨であり、それらの相互競争をあおることによって、「より使いやすく、役に立つ製品を世に出させる」、という目的があったと思われる。

 冒頭に、「狙いどおり」と書いたのはその意味で、2000件に及んだ最初の数年間がこの施策に合致していたといえよう。ところが、「薬機法」が浸透し始めた2015年ごろを境にして、認証品目数追加にも関わらず、認証数の急激な落ち込みとなってしまったのは、何が問題なのであろう。

 統計では出てこないので、申請数そのものの変動は我々の知りえない範囲にある。とはいえ、これだけ大幅な減少となったのには、何らかの隠された原因があるだろう。

 まず考えられるのは、JIST0106-1:2012「医用電気機器―第1部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項」に関する改訂および、JIST14971:2012「医療機器―リスクマネジメントの医療機器への適用」に関する改訂だろう。これによって何が起こったかというと、認証基準の「本質的な部分」は全く変わってないのに、実務上のタスクが大幅に増えたことになる。これは、認証する側とされる側の両者に多大な時間と費用を加算する結果となった。事実、認証申請前に、これらに伴う資料作成および試験期間などが倍増し、実際の審査期間前にこれらの準備期間が加算されてしまった。機器の性能・機能などの本質以外の「一般的な安全性」や「リスクマネジメント」といった側面で、大幅な規制強化を強いる結果となっている。

 また、新たに加わったプログラム医療機器の認証の中で、JIST2304:2012「医療機器ソフトウエア―ソフトウエアライフサイクルプロセス」の規制が加わっている。さらにソフトウエアのバリデーションなどの付帯作業も加わった。その書式(ひな型)の作成や仕組みの理解、社内外でのそれらに対する議論にも多くの時間が割かれることにつながった。

認証基準は、自動的に厳しくなる

 前項で認証基準の「本質的な部分」といったのは、品目ごとの性能や機能に関わる項目のことであり、そこが認証基準としての主幹部分なのだ。ところが、この基準に取り入れられているJIS規格は、5年ごとの改正があるため、上記のそれぞれが2017年版になった。通常、国際規格であろうと国内規格であろうと、改定となると、規定項目が増加するわけで、その増加分が自動的に認証基準にスライド導入されてしまう。

 こうなると、すべての認証基準が上がり続けるという負のサイクルに突入してしまっているわけだ。さらには2018年より、新規規格としてのIEC62399「医療機器のユーザビリティ―」の作成が義務付けられた。本来、IEC、ISO、JISなどの性格は、すべての製品の「標準化」が主目的であり、これらは強制や規制の強化ではない。ところが、これらの諸規格を「認証基準」に取り込んだ瞬間に、「強制」や「規制」に変質してしまうのだ。本来、「国際規格・国内規格」の性質と、「薬機法」という「規制」とは直結していないはずだ。

 この問題は、どこかで歯止めをかけるか、十分な検討期間を設けるなどの対応が必要であろう。基本的に性質の違う「標準規格」を自動的に「認証基準」に直結してしまうのは、申請者側・審査者側にとっても混乱を招くだけの大問題である。もちろん、「認証」でない「承認」や「届け出」についても、その状況に変わりない。このまま、放置するなら、いずれ、メーカだけでなく審査機関も破綻してしまわないか、そんな心配がある。

 こうした点を考慮しても、第三者認証制度は曲がり角に来ている。この課題を見過ごしているだけでなく、本来の第三者認証制度のあり方について、抜本的な見直しが急務である。