今後、エンジンはどこまで高効率になるのか。自動車、エネルギーの60テーマに関する今後10年の技術動向を見通した「テクノロジー・ロードマップ 2016-2025 <自動車・エネルギー編>」の企画・編集を手掛けたオートインサイト代表の鶴原吉郎氏が、エンジン開発のこれからのトレンドを読み解く。

「ライトサイジング」と呼ぶコンセプト

 ドイツAudi社が2015年7月に欧州で発売した新型「A4」に搭載する2.0L・直列4気筒直噴ターボエンジン「EA888」は、2.0L〜1.8Lクラスとして高い動力性能を保ったまま、CO2の排出量を120g/km以下に抑え、1.4Lエンジン並みの低燃費を実現したのが特徴だ。

ドイツAudi社の第3世代「EA888」エンジン
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 これまで欧州では、エンジンの排気量を減らして燃費を向上させ、低下した出力をターボチャージャーなどの過給機で補う「ダウンサイジング」と呼ぶ手法が燃費向上技術の主流だった。

 これに対してA4に搭載された新型エンジンは、EA888の第3世代に当たり、「モディファイド・ミラーサイクル」と呼ぶ、圧縮行程よりも膨張行程を大きくした燃焼サイクルに、ターボによる過給を組み合わせて燃費を向上させた。具体的には、バルブタイミングを遅閉じにしてミラーサイクルを実現する。

 併せて、シリンダヘッドとピストンの形状や、吸気ポートの形状の変更により、最適な燃焼を実現した。クランクシャフトの直径を52mmから48mmへと小径化し、ピストンリングの最適化、バランス・シャフトの改良、チェーンドライブの最適化、低粘度のオイルを使うなどにより、摩擦抵抗も低減している。

 Audi社は新型エンジンの燃費低減手法について、排気量はやみくもに減らせばいいわけではなく、クルマの特性や、対象とするユーザーのニーズに合わせた適正な排気量を選ぶべきだとし、このコンセプトを「ライトサイジング」と呼んでいる。

 欧州でダウンサイジングが燃費低減技術の主流になる中、マツダは以前から「排気量拡大こそ低燃費化につながる」として「アップサイジング」を提唱してきた。「テクノロジー・ロードマップ 2016-2025 <自動車・エネルギー編>」で「ガソリンエンジン」について執筆した自動車ジャーナリストの川端由美氏によれば、2015年5月に開催されたエンジン関連の大規模シンポジウム「ウィーンモーターシンポジウム」で、マツダは過給ダウンサイジングに力を入れる欧州車メーカーの開発方針に真っ向から反論した。