二次電池の代表格であるLiイオン二次電池の容量拡大ペースが今後2~3年で鈍化、電池開発の主軸は高容量化一辺倒から急速充電対応や長期信頼性の確保など、用途に応じた特性改善にシフトしていく。自動車、エネルギー、医療・健康など12分野、100テーマに関する今後10年の技術動向を見通したレポート「テクノロジー・ロードマップ 2016-2025 <全産業編>」の編集を手掛けた日経BP未来研究所の朝倉博史・上席研究員が、同レポートと先ごろ開催されたばかりの「東京モーターショー2015」から見えてくるLiイオン二次電池のトレンドを分析する。

自動車用途で低下する高容量化の必要性

 Liイオン二次電池の進化の歴史は、高容量化に支えられてきた。かつてはパソコンや携帯電話機の電池駆動時間を延ばすためだったが、2000年ごろから自動車がその牽引役となった。特に動力がモーターだけの純粋な電気自動車(EV)は、1充電当たりの航続距離が電池容量に直結するため、重量当たりの容量(エネルギー密度)を高めることがLiイオン二次電池の最も重要な開発課題となった。しかも、1台のEVに搭載するLiイオン二次電池は、携帯電話機用の数千台に相当する容量となることから、数量面の市場全体におけるインパクトが大きく、開発のリソースもそこに集中した。

 ところが、この自動車用途において高容量化の必要性が低下してきている。その要因は主に三つある。

 第1に、消費者ニーズの頭打ちである。当初はガソリン・エンジン車との比較でEVの航続距離も500km以上が普及の条件とされていた。実際には消費者の利用状況を調査すると、ガソリン・エンジン車でさえ500km以上の走行はごくわずかである。今回の東京モーターショーに出展された日産自動車の新型「リーフ」(図1図2)は、搭載電池容量を従来モデルの24kWhから30kWhに増やし、航続距離を228kmから280km(JC08モード)に延ばしたことで、「85%の顧客(ニーズ)をカバーできるようになった」(同社企画・先行技術開発本部技術企画部部長の佐藤学氏)という。

図1 日産自動車のEV新型「リーフ」
航続距離を従来の228km(電池容量:24kWh)から280km(同30kWh)に延ばした。2015年11月に日本で発表、同年12月に発売予定
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図2 新型「リーフ」搭載の電池モジュール
左はカットモデル。従来は4セル/モジュール×48モジュールで1パックとしていたが、今回は8セル/モジュール×24モジュールとした。総セル数は同じだが、モジュール数を半分に減らすことで金属筐体などの周辺部材を削減し、スペース効率を上げた
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