既存産業とICTの融合、そしてAIの覚醒

 こうした変化に対応する手段として、極めて重要なのが「科学技術」の力です(関連セミナー「テクノロジーインパクト2030」)。そもそも欧米への富の集中は、産業革命がもたらしたものだともいえます。つまり、科学技術の進化によって引き起こされる変革は、それ単体でも世界の様相を一変させるほどの破壊力を秘めているのです。

 その大変革は、すでに準備されつつあります。主役は、広い意味でのICT(情報通信技術)になるでしょう。

 歴史を振り返れば、人類の繁栄を支えてきたのは生産性の向上であり、近世の急成長は「工業化」によって達成されたといえるでしょう。人手頼りの手工業から少ない人手で量産を可能にする装置産業へのシフトを果たし、ロボット、ICTなどを導入しつつその高度化を進めてきたわけです。繊維、機械、電子など多くの分野でこれが進行し、そのことが社会に大きな影響を与えてきました。

 けれど、見渡せば「人手頼り」の産業分野はまだまだあります。医療、農業、金融を含むある種のサービス業、職種では、経営、教育、物流/運輸などがそれに該当するでしょう。

 ほとんど確かなことは、これらの分野でかつてないほどの生産性向上が達成され、そのことが全産業に影響を及ぼしていくということです。その推進力となるのが、いわゆるICTでしょう。

 クラウドの出現、ビッグデータの誕生、それを糧としたAIの覚醒。科学技術が進展しAIが人類の知能の総和を超える「シンギュラリティ」と呼ばれる水準に近づいていくことで変化は加速し、波及する範囲は劇的に広がっていくはずです。あらゆるビジネスの成否は、この変化にどう対応し、直面する社会課題の解決に結びつけていくかにかかっているのです。

「パンドラの箱」は開いた

 例を挙げてみましょう。ほんの一例です。

 昨今、新聞紙上を賑わすようになったテーマの一つに、自動運転があります。機械が人に代わって運転をしてくれる技術です。おそらく、東京オリンピックでは関連施設を結ぶ無人バスを走らせるなどの社会実験が実施されるでしょう。高齢化が進む地方では、それより早く導入が始まるかもしれません。

 ところで、自動運転をみなさんはどう捉えているでしょう。一般には、「ゲームしながら移動できるようになる」「クルマで出かけても酒が飲めるようになる」程度に認識されている方が多いのではないでしょうか。

 けれど、思索を深めていけば、自動運転車の普及は極めて大きな影響を社会に与えるものであることが分かってきます。