コニカミノルタは、新たな成長シナリオを描くために社外との協力を進めている。前回は、同社の執行役で事業開発本部長の市村雄二氏に新規事業創出の勘所と、拠点である「Business Innovation Center (BIC)」を設置した意図や特徴を聞いた(前編へのリンク)。市村氏によれば、新規事業創出には組織という仕組みだけでなく、社員が日ごろから磨いておくべきスキルが必要という。今回は、社員の心がけを聞いた(関連セミナー「テクノロジーインパクト2030」)。

コニカミノルタ 執行役 事業開発本部長 市村雄二氏。1960年生まれ。1984年大阪大学経済学部卒。大手グローバルIT企業にてメインフレームの営業からスタートし、企画業務に携わり、その後、北米はもとよりグローバルにITサービス事業運営や事業会社の統廃合及びスタートアップを含めた新規事業立ち上げ等を行った。コニカミノルタでは、M&Aやトランスフォーメーションを情報機器部門で進め、ITサービス事業の強化を担当、現在は執行役・事業開発本部長としてコニカミノルタ全社の次の柱となる事業の構築を行っている。

――BICで新規事業開発を進める際、必要になる要素技術は社内からの採用を優先するのでしょうか。

 社内を優先することはありません。「まず、うちの研究所に問い合わせることはしないでくれ」と伝えてあります。自社で手掛けている要素技術は、1000や2000ある選択肢の1つかもしれません。そのような状況でも、何が何でも自社技術を優先するのは意味がありません。

 この考え方は、とても理にかなっています。どのような会社でも、売り上げの10%程度を研究開発につぎ込んでいます。1兆円の売り上げであれば1000億円です。金額自体は少なくないかもしれませんが、日本全体、さらには世界中で膨大な金額が研究開発に使われている状況を考えると、たかが1000億円ですよ。会社にとって研究開発費は、本当に必要な要素技術の知的財産を保全するために投入すればよいのであり、すべての技術を自社開発で賄うのは割が合いません。だから、別に自社の技術に固執する必要はないのです。

 私は社内でよく、「どんなに素晴らしいアイデアが思いついたとしても、その瞬間に全く同じ事業をつくろうとしているのが全世界で100人は絶対にいる」と言っています。アイデアを思いついた時に、もう事業化競争が始まっているんです。その競争に打ち勝つ要素は何かというと、スピードしかない。だから、1番スピードが出る形で事業を大きくするようにしなければなりません。それには、1番速く、社会価値や顧客価値を生むために1番良いセットを求めればいいわけです。「社内だから優先する」という議論は、社会価値や顧客価値を生むことからすると、何の価値もありません。

――BICが担う役割は大きいですね。BICの規模はどのくらいですか。

 BICのヘッドクオーターにあたる部分は5~6人、世界5極(日米欧、中国、シンガポール)に設置したBICでのコア人材はそれぞれ10~20人くらいです。BICの人数を聞いた社外の人からは、「えっ、そんなに少ないのですか?」とよく驚かれます。

 そもそも、人の数とか、オフィススペースの広さとか、そういう物差しで規模や価値を想像することそのものがおかしい。BICではオープンイノベーションをやっているので、社外に多くの協力者がいます。100人の会社10社に出資していれば、1000人とプロジェクトを進めていることになりますよね。ある領域に焦点を合わせた事業を創出するとき、当社内に特定分野の専門家がいなくても、実現するために専門的な技術が必要になれば、そうした技術に強みがある会社と組めばよいのです。

――自社内の陣容を数で考えること自体、自前主義の「重力」に引っ張られているわけですね。

 やはり、発想を転換していかないといけません。実証実験についてもそうです。すべて、自分たちだけで実証実験をやる必要はないわけです。例えば、病院の中の業務フローに我々の新しい技術やシナリオを持ち込む場合、我々だけでは実証実験できませんよね。病院内で実際に業務に携わっている人たちと一緒に進める必要があります。実は、オープンイノベーションで事業開発すれば、生産性は格段に上がるんですよ。