シャープは欧州で8Kモニターを発売した。IFA GPC 2018での同社の展示の様子(写真:Messe Berlin)

8K動画のエコシステムを構築

「8Kはユーザーに圧倒的なリアリティーと新しい発見を与え、家庭でより大きな画面サイズを可能にする」

 2018年4月に欧州で8K動画を表示可能な70型の家庭用モニターを発売したシャープ。テレビチューナーを備えない高級機種ではあるものの、この製品は欧州のテレビ市場に再参入する同社の意気込みを示す戦略機種だ。シャープの欧州子会社で販売担当のVice Presidentを務めるSascha Lange氏は、同月にイタリアのローマで開催された「IFA Global Press Conference 2018(以下、IFA GPC)」(主催:ドイツMesse Berlin)で、大画面の8Kテレビが家庭の中心に据え置かれる未来への期待を話した。

シャープの欧州子会社でVice Presidentを務めるSascha Lange氏(写真:Messe Berlin)

 IFA GPCは、8月末にドイツのベルリンで開幕する欧州最大の家電見本市「IFA」の概要を発表する報道関係者向けのイベントだ。経営再建でIFAへの出展を一時期見合わせていたシャープは、昨年の同見本市で欧州市場での復活を宣言していた。今回発売した8Kモニターに加え、プロ向けのビデオカメラや動画編集装置などコンテンツ制作面も含めた8K動画のエコシステム構築を目指している。

 「シャープは、制作から表示まで8Kコンテンツ全体をサポートする。(親会社の)台湾Foxconn(鴻海精密工業)と一緒に動画のストレージやコンテンツ配信のシステムの開発も進めている」とLange氏は意気込む。

2018年に4Kテレビの世界販売台数は前年比38%増の9840万台に。ドイツ家電通信機器協会(gfu)のHans Joachim Kamp会長の講演資料から。
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 まだコンテンツがほとんどない8Kテレビをシャープが前面に出した背景には、テレビの大画面化が進んでいることがある。ドイツの調査会社GfKによれば、テレビの世界販売台数は2017年に2億2300万台と前年比2.2%減った。

 一方で、先進国を中心に55型以上の大画面テレビの販売は好調だ。欧州では同年に55~59型が前年比23%増、60~69型が同37%増と伸び、55型以上の販売額がテレビ全体の4割を超えた。GfKは、2018年に大画面の4Kテレビの世界販売台数が同38%増の9840万台に達するとみている。

 「64型の4Kテレビの解像度は32型のフルHDテレビと同じ。さらに大きな画面サイズを楽しむための条件は8Kだ。120~130型の画面サイズさえも現実的になる」と、Lange氏は将来を見据える。付加価値の高い大画面テレビの市場は今後も広がる。コンテンツについても、米Netflixなどのネット動画配信(OTT、over-the-top)事業者が8K作品の制作に乗り出している。8Kコンテンツを視聴するために、そう遠くない将来に8Kテレビのユーザー層が広がるに違いない。これが8Kをきっかけにテレビで復活を目指すシャープの目論見だ。

テレビの大画面化、薄型化の進行に伴って、リビングルームでテレビを置く空間が変わっている。シャープのLange氏の講演資料から。

 ここにきて、大画面のテレビを設置することを前提に、家庭のリビングルームでテレビが置かれる空間にも変化が見られると、Lange氏は指摘する。とはいえ、仮に同氏が提示した変化が進んでいるとしても、かつて家電メーカーが想定した「リビングに家族がそろって大画面テレビを楽しむ」という姿とはだいぶ違う未来がやってくることになりそうだ。世界のメガトレンドが、全く異なる方向で進んでいるからである。