2016年、医療の持続可能性は重い課題となって当事者にのしかかっている。にもかかわらず、長期トレンドを見据え、医療改革に踏み切った国はほとんどない。英経済誌「The Economist」の調査部門「The Economist Intelligence Unit(EIU)」傘下のClearstate社は2016年から2025年までの医療・健康分野の変化を予測し、「グローバル・メガトレンド 医療・健康の未来 2016-2025」(日経BP社)というレポートにまとめた。Clearstate社でManaging Directorを務めるIvy Teh氏は、今後10年間で「患者の自己健康管理」「医療提供者」「テクノロジー」「規制」のそれぞれの領域に大きな変化が起きると指摘する。

最大の課題は、医療財政の持続可能性

 人口統計や経済の仕組み、技術が世界規模でめまぐるしく複雑に変化する中に、今日の医療はある。71億人に達している世界の人口は増え続けており、高齢者人口の比率増と医療需要の高まりから、先進諸国と一部の発展途上国で、医療を支えるヒト、モノ、カネの資源が枯渇しつつある。

 2016年に65歳以上の高齢者は世界人口の10%を占める。その比率は西欧では20%に、日本では27%にも達する。一方、発展途上国の生活は徐々に豊かになり、生活習慣から生じる慢性疾患が増える。豊かになった中流階級は、より多くの情報を手に入れ、より質の高い医療を求めるようになる。各国は医療インフラに対する投資を増やし、国民健康保険などの普及に取り組んでいる。

年齢別で見た世界の人口分布の予測
世界の人口に占める高齢者(65歳以上)の比率は着実に増加し、2050年までに若年層(15歳未満)の比率を上回る。(出所:「グローバル・メガトレンド 医療・健康の未来 2016-2025」)

 だが各国にとっては医療財政の持続可能性が最大の課題になっている。高齢者や慢性疾患を抱える患者がもたらす医療の需要増と、医療技術の進歩とが相まって、医療費や、公共部門/民間部門が支払う医療支出は制度の持続が難しいところまで増えてしまった。2016年以降、医療財政の持続可能性はますます重い課題となって各国政府や医療費の負担者にのしかかるだろう。

 医療制度の真の改革は複雑かつ困難で時間がかかる取り組みになる。制度改革はさかんに論じられているが、現状を踏まえ、持続可能な医療制度に向けて長期的な改革に踏み切っている国はほとんどない。このため2016年の医療は依然として未完成の状態に置かれる。ただし、現場では変化が起きており、医療は着実に進化していくはずだ。

 英経済誌「The Economist」の調査部門「The Economist Intelligence Unit(EIU)」の傘下にあり、医療分野専門の市場調査を10年以上手掛けてきたClearstate社は、このほど2016年から2025年までの医療分野のメガトレンドを予測した*1。患者の自己決定権、医療の提供者、テクノロジー、規制のそれぞれで医療を取り巻く環境は変化していく。

*1 EIU、Clearstate社によるレポート「グローバル・メガトレンド 医療・健康の未来 2016-2025」(日経BP社)の詳細は、こちらを参照。