ニーズの変化予測を起点にする

 ただ、顧客ニーズは変化していく。携帯電話機であれば、薄くて軽くて待ち受け時間が長ければ売れた時代があった。しかし、携帯電話の用途が通話から情報取得へと変わり、通信速度の向上によってクラウド型のサービスが多数登場したことで、顧客ニーズは一変した。

 今の顧客ニーズがどこにあるかは、市場調査によって知ることができるかもしれない。けれども、それを踏まえて技術開発に着手したとしても、成功するとは限らない。調査結果はあくまで現時点のニーズを示したものであり、未来のニーズを保証するものではないからだ。

 必要なのは、今のニーズを知ることではなく、トレンドを読み、いまだ顕在化していないニーズの芽を発見するということである。同様に、企業の経営計画も、現時点ではなく将来の顧客ニーズを見越したものでなければならないはずだ。その根拠となるテクノロジー・ロードマップに、同じ要件が求められる。

 従来のテクノロジー・ロードマップが「技術起点」であったのに対して、あるべき「テクノロジー・ロードマップ」は、「顧客ニーズ起点ということになる。

 未来の顧客ニーズを予測したら、これを基に将来出現する商品を予測し、そこで実現されている機能や性能について推定する。その後に、この機能や性能を実現するために必要な技術を割り出し、それをプロットしていくことによって技術進化の道程を描いていくのである(図1)。

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顧客ニーズ起点のテクノロジー・ロードマップの例 (出所:『テクノロジー・ロードマップ 2016-2025 <全産業編>』)

 さらに、技術は単独で進化するわけではなく、他分野で生まれた技術に強い影響を受け、融合しながら進化していく。この傾向はどんどん強まっている。このことは、技術進化の原動力となる「ビジネス」が、業界や分野といった垣根を越えて連携や融合の度合いを強めていることと無縁ではない。実際、発祥は電機メーカーでありながら、医療機器分野で事業の拡大を図ったり、新たに農業の分野に参入したりという事例が急速に増えてきた。

 だから、ある分野だけを見て技術の進化を見通すことはできない。あらゆる分野の技術の進化を総覧し、垣根を越えた技術の融合、競合などについても十分に考慮しなければならない。