現地レポート アメリカ太陽光発電の最前線

EVで「ダックカーブ」解消、系統蓄電池への投資を回避

双方向制御で日中の太陽光発電を充電し、夕方ピーク時に放電

2018/07/26 05:00
Junko Movellan=ジャーナリスト

 気候変動対策で米国をリードするカリフォルニア州は、太陽光発電、エネルギー貯蔵、そして電気自動車(EV)の導入量において、ダントツのナンバーワンである。

EVが系統蓄電池を代替

 同州は、2020年までに再生可能エネルギーによる電力の供給割合を33%、そして2030年までに50%にする目標を設定している。電力系統の信頼性を保ち、さらに多くの再エネを導入するため、同州は民間電力会社3社に、2024年末までに合計1.3GWのエネルギー貯蔵用蓄電池の設置を義務付けた。さらに、2025年までに150万台のゼロ・エミッションカー(ZEV)の導入も法律化している。

 米エネルギー省(DOE)の主管する米ローレンス・バークレー国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory:LBNL)の研究者が、「クリーンな電力網の実現を可能にするクリーン車」という分析レポートを発表した。このレポートでは、「EVは、カリフォルニア州の再エネ目標をサポートする一方、定置型蓄電池の導入にかかる多額な投資を回避できる」と分析している。

 EVが運輸部門の脱炭素化に貢献するだけでなく、再エネを電力系統に統合するための資本コストも下げられる、つまり、定置型蓄電池よりEVの方がより低コストで「ダックカーブ」問題を解決できることを示している。

 同州はさらなる温室効果ガス削減のために、太陽光発電の導入拡大を目指すが、「ダックカーブ」問題に直面している。

 「ダックカーブ」とは太陽光発電導入の拡大に伴い、日中には電力供給が過剰となる一方、夕方の需要ピーク時には電力供給が不足する、という問題である。電力需要から太陽光発電などの変動型エネルギー源の供給を差し引いたものを「実質需要」と呼ぶ。分析によると、この実質需要を時間ごとに追っていくと、4つの問題点が見える(図1)。

図1●カリフォルニア独立系統運用機関(CAISO)のダックカーブをもとに4点の問題点を表示
(出所:Jonathan Coignard el al 2018 Environ. Res. Lett.)
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「過剰発電」と「ランプアップ」が厳しい課題

 まず、午前中に「ランプダウン(急な実質需用量の低下)」に直面する。これは、太陽光発電の出力が急激に増加する時である(Ramp min)。

 次に日中「過剰発電(日中の低い実質需要)」が発生する。これは、需要が低い日中に太陽光発電の出力が最高(MAX)に達することで、供給過剰になることで生じる。その場合、コスト的に効率的な方法ではないが、大規模なベースロード発電所の出力を絞っていくか、再エネの導入量を拡大する目標に反して、太陽光発電の出力を抑制しなくてはならない (P min)。

 次に起こるのが、夕方の「ランプアップ(急激な供給の出力増加)」だ。夕方から電力需要が増加する一方、太陽光発電の発電が減少する。その時、火力発電所など他の発電源を迅速に焚き増し、供給を増加させなければならない (Ramp max)。

 そして、「実質需要のピーク」が訪れる。電力需要がピークを迎える夕方過ぎ、逆に太陽光発電からの出力はゼロとなる (P max)。

 これら4つの現象のうち、一般的に日中の「過剰発電」と夕方の「ランプアップ」が最も厳しい課題とされている。

 この分析では、EV台数が増加するに従ってダックカーブにどのように影響するかを、3つの異なるシナリオを想定している(図2)。

図2●分析の前提となる3つのシナリオ
(出所:筆者)
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 ちなみに、シナリオ3では、30%のオフィスと60%の家庭では放電制御(双方向パワーフロー)が可能で、残りは一方向パワーフローという設定になっている(図3)。

図3●シナリオ別EV導入によるダックカーブ緩和
a: P min(供給過剰)、b: P max(需要ピーク) , c: Ramp min(ランプダウン)、d: Ramp max (ランプアップ)(出所:Jonathan Coignard el al 2018 Environ. Res. Lett.)
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5GWのEVは150億ドルの蓄電池投資に匹敵

 分析によりと、シナリオ1の場合(青線)、現在から2025年までに導入されるEVは、帰宅後など現在と同様、制御されずに充電される。この場合、ダックカーブに対してあまり緩和の影響を及ぼさず、EVのグリッド統合への大きな機会を失ったことをなるとしている。赤線はEV導入を考慮していない従来のダックカーブを示す。

 シナリオ2(緑線)では、EV充電を帰宅後の夕方でなく日中に会社などで計画的に充電することで、出力抑制が必要な太陽光発電からの余剰電力を充電し、電力系統の需給バランスを改善できる。これは、1GWの定置型蓄電池を14億5千万ドル~17億5千万ドルで導入するのに匹敵するという。

 さらに、シナリオ3では(黒線)、EVが夕方のピーク時に電力を電力系統に放電する場合、約5GWの日中の供給過剰・夕方のピーク需要を削減できる一方、ランプアップとランプダウンを現在のレベルに維持できることになっている。これは、 128億~154億ドルの定置型蓄電池導入にかかる投資額に匹敵するという。

 5GWのEVによる系統運用者向けサービスは、カリフォルニア州が義務つけている1.3GWを大きく上回っている。

 EVはクリーンな系統をサポートするだけでなく、定置型蓄電池にかかる投資を回避でき、定置型蓄電池用の投資をさらなるクリーン車の導入加速に向けるべきだ、というのが同レポートによる分析結果になっている。

 今回のレポートは、太陽光を大量に導入する上で、EVの果たせる大きな可能性を示しているが、逆に言えば、米国で最もEVが導入されているカリフォルニア州といえども、まだまだZEVの導入が進んでいないことを示している。その導入量は、州目標の約5分の1に留まっている。