現地レポート アメリカ太陽光発電の最前線

企業だけじゃない! 「RE100」目指す自治体が続々

トランプ政権「パリ協定・離脱」への反発

2018/07/17 05:00
Junko Movellan=ジャーナリスト

350以上の市長が「パリ協定」目指す

 昨年6月に米トランプ政権が、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱すると発表した時、世界各国から反発の声が上がり、米国の再生可能エネルギー市場が大きく後退すると予測された。そんな海外の懸念と裏腹に、国内の市や州の地方自治体、さらに企業が団結を強め、「『ワシントン(連邦政府)なし』でも米国は再エネ目標を達成する」と、独自に気候変動対策に取り組む動きが加速した。

 実際、トランプ政権がパリ協定からの離脱を発表した後、米国各地の市長で構成される「温暖化対策市長同意(Climate Mayors Agreement)」の加盟者が急増し、現在では350以上の市長が、独自にパリ協定の目標達成を目指す方針としている。

 さらに、温室効果ガスの排出削減にとどまらず、地域の消費電力を全てクリーンな再生可能エネルギーで賄うと公約する地方自治体も急増した。

 2018年7月現在、再エネ100%を条例化した地方自治体が全米に71ある。そのうち、5つの地方自治体はすでに再エネ100%を達成している。さらに、再エネ100%を条例化しようとキャンペーン中の市は150を超える(図1)。

図1●「再エネ100%」を条例化した地方自治体が全米に71
(出所:Sierra Club)
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シエラクラブが「Ready for 100%」

 このキャンペーンとは、「Ready for 100%」と呼ばれる地方自治体と州政府の再エネ転換を促進するもので、米国のリーディング自然保護団体であるシエラクラブ(Sierra Club)によって2016年1月に始められた。「よりクリーンで、より安く、より健康なエネルギーは今ここにあります。米国の全てのリーダーが100%クリーンな再生可能エネルギーを全ての人に誓う時が今です!」を謳い文句に全米各地の支部を通し、キャンペーンが繰り広げられている。

 シエラクラブで「Ready for 100%」の副ディレクターを務めるカシー・ローバック氏によると、まずトランプ政権が発足した2016年11月にキャンペーン参加者が増加し、パリ協定離脱で市町村の再エネ導入に対する関心、そして義務感が高まったという。

 企業の加盟する「RE100」とは違い、「Ready for 100%」は、市町村、地方自治体、さらに、州の再エネ100%への移行に焦点を当てる。このキャンペーンの趣旨は、地方自治体のリーダーがコミュニティ全体を100%クリーンで再生可能なエネルギーに移行する目標を掲げ、それを奨励・認識すること。その際の目標は、独立した決議または宣言によるものでも、地域社会の気候行動計画またはエネルギー計画への統合でもよい(図2)。

図2●市議会で再エネ100%決議を賛成多数で可決したオクラホマ州ノーマン市
(出所:Sierra Club)
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コミュニティ全体を再エネに

 キャンペーンは市の運営に関わるエネルギーだけでなく、家庭、さらにビジネスのコミュニティ全体の参加・誓約を支援する。

 ちなみに、カジノで賑わうネバダ州ラスベガス市は2016年末、「100%再エネを達成」と発表したが、公共用建物、コミュニティセンター、消防署、公園などのラスベガス市の所有の建物「のみ」が全て再エネで賄われているということで、賑やかなカジノを含む「眠らない町ラスベガス」全体が再エネ100%というわけではない。

 ローバック氏によると、ラスベガス市のように、市の建物、または市営事業を再エネ100%でまかなう自治体は多いが、「コミュニティ全体」の転換でない場合は、シエラクラブの「Ready for 100%」に含まれない。

 ちなみに「Ready for 100%」の採用・設定の際、以下の総則を取り入れることをシエラクラブは推薦する。

(1) 地域全体(公共施設だけでなく、家庭、商業・産業など全て)の電力消費を再エネ賄う。

(2) 100%の目標を2035年にまでに達成する。

(3) 全てのコミュニティメンバーに公平、手頃な価格で(再エネの)アクセスを与える。低所得層( 良質な環境の中で生活できるが富裕層に対し、環境破壊の被害者となりやすいマイノリティーや貧困層 )、環境正義(公正)、および化石燃料業界に苦しめられたコミュニティを優先的に対応する。

(4) クリーンな再エネのみを利用(原発、天然ガス、石炭、石油、またはその他の炭素ベースのエネルギーを含まない)。

(5) 透明かつ包括的な計画立案プロセスであり、地域社会のメンバーや地域の企業に参加する機会を与える。

全員が「再エネ」にアクセス

 シエラクラブでは電力で再エネ100%を満たすだけではなく、運輸と冷熱(暖房・冷房)を含めた全てのエネルギー消費部門を再エネに変換すること、さらに、再エネの「地産地消」も奨励している。

 ちなみに、再エネ100%を条例化した全米71の地方自治体の中には、人口何十人、何百人という小規模な地方自治体もあるが、最も規模の大きい地方自治体はカリフォルニア州サンディエゴ市で、人口は140万人を超える。同市の市長を務めるケヴィン・ファルクナー氏は、「クリーンエネルギーへの転換は、単に正しいだけでなく、スマートなことである」と、語った。

 サンディエゴ市は電力小売規制下にあり、さらに、地域独占の大手電力会社が再エネ導入拡大に市ほど積極的ではないために、同市が再エネ100%を達成するためには、「コミュニティ・チョイス・エネルギー」が必要とされている。

 「コミュニティ・チョイス・エネルギー」は、日本の「地域新電力」に似ているモデルで、地方自治体が自ら発電事業を手がけ、主に地域発電所から電力を調達し、地域独占電力会社の所有する既存の送配電網を使い、よりクリーンなエネルギーを手頃な価格でコミュニティに提供するものだ。

 屋根置き太陽光発電の導入で家庭・ビジネスの再エネ自産自消を促すともに、「コミュニティ・チョイス・エネルギー」で、コミュニティ全員に地産地消の再エネにアクセスできる。

 連邦政府による気候変動政策の後退が、皮肉にも自治体や市民の意識を高めたと言える。今後も政権の消極姿勢が続く限り、米コミュニティの再エネ100%が加速するとの予想さえあり、米国の再エネ100%の流れは、政権の姿勢とは逆説的な動きを見せている。(図3)。

図3●サンディエゴ市で「コミュニティ・チョイス・エネルギー」を求める市民団体
(出所:San Diego Community Choice Alliance)
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