現地レポート アメリカ太陽光発電の最前線

アップルとサプライヤー、稼働と開発中で「再エネ5GW」

自社で「クリエイト」する再エネでさらなる前進

2019/05/10 05:00
Junko Movellan=ジャーナリスト

1年前に「再エネ100%」達成

 事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーに転換することを目指す「RE100」。ここ数年、この国際イニシアチブに加盟する企業が世界中で増加している。

 とはいえ、「RE100」に加盟する企業の多くは、再エネ調達の目標設定から日が浅く、本格的な取り組みはこれから、というケースも目立つ。そんななか、米アップルは「再エネ100%」目標をすでに1年前に達成している。しかも、そのスコープ(適用範囲)は、米国内のみならず、世界43カ国にある同社のオフィス、直営店、データセンターなどグローバルな事業所全体に必要な電力を再エネで調達すると掲げている。

 加えて、同社製品の製造過程などサプライチェーンから大量のCO2が排出されることから、部品メーカーなどサプライヤーの消費する電力量を削減し、再エネに転換することに対しても積極的に支援している。

 同社の最新版環境レポートによると、2019年4月時点で、アップルと同社のサプライヤーは、合計 1.9GWのクリーンエネルギーに投資し、電力を調達したという。発電量は41億kWhに達する。さらに3.3GWの再エネ発電所を開発中で、完成後に電力を調達することになっている。 これらプロジェクトの内訳は、風力発電が67%、太陽光発電が23%となっており、稼働中と開発中のプロジェクトを合わせると5GWを超えることになる(図1)。

図1●アップルと同社サプライヤーによる再エネ調達量(GW)(深緑色:稼働中、淡緑色:計画済み)
(出所:Apple)
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再エネを「クリエイト」

 アップルの「RE100」への取り組みは、再エネ調達量の規模や、サプライヤーまで「再エネ100%」に関与するなど、他の加盟企業と比べてスケールが大きい。加えて、最も違う点は、再エネプロジェクトを、可能な限り自社で「クリエイト(創出)」することである。

 同社は、再エネプロジェクトを戦略的に「クリエイト」している。現在、同社が調達する再エネの66%は、同社が創出したものという。実際、600MWを超える再エネプロジェクトを所有しており、電力事業者を除けば最大規模の再エネ投資家になるという。

 実際、再エネプロジェクトはどのように「クリエイト」されるのだろうか?

 同社は3つの方法を上げている。それは、(1)自社でプロジェクトを開発して建設、そして所有する「直接所有」型(図2)、(2)他社の開発した案件に投資し、プロジェクトの一部を所有する「投資参加」型、そして(3)地域に新規に建設される再エネプロジェクトからの電力を購入する「長期電力購入契約」型――である。

図2●アップルが開発・所有している自社事業所に導入された太陽光発電システム
(出所:Apple)
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ウォルマートは「クリエイト」せず

 日本では全国一斉に電力小売りの全面自由化が進められたが、米国では州によって異なる。電力小売市場が複雑な米国では、電力会社、または独立電力事業者などから再エネを購入するのが、一般の企業にとって手っ取り早い。 ただ、再エネ導入に消極的な地域独占電力会社が幅を利かせる電力小売り規制下の州では、需要家が再エネを調達する方法は限られている。

 さらに、電力需要のある自社の事業所や工場の屋根上、または敷地内に太陽光発電システムなどの再エネ設備を導入して消費する「自産自消」型の場合、設備導入の初期コストが大きくなるうえ、データセンターなど膨大な電力消費施設を運営するIT企業では、自社施設での設置スペースに限界があるなどの問題もある。

 世界最大級のスーパーマーケットチェーンの米ウォルマートは、2005年から店舗に太陽光発電を導入し始め、昨年4月時点で371の拠点(店舗と流通センター)に計149MWの太陽光発電を導入済みである。各システムはその店舗の15~30%の電力消費量を賄う。同社はこれらのシステムを所有せず、「第三者所有モデル」を採用し、プロジェクトデベロッパーが設備を開発・所有し、 ウォルマートが電力購入契約(PPA)のもとで自社の敷地で発電された電力を買い取る。システム開発と発電事業には関与せず、需要家のスタンスを保っている。

 これに対し、アップルの場合、「再エネ100%」達成のため、発電と電力供給にも踏み込んだことになる。

 電力小売り規制下にある東海岸のノースカロライナ州で、 2011年アップルのデータセンターを「再エネ100%」で賄うため、再エネの開発・利用を促進するために制定された連邦法制である「公益事業規制政策法(PURPA: Public Utility Regulatory Policy Act)」を活用し、3サイトの太陽光発電所を建設し、同社が100%所有した(図3)。

図3●アップルがデータセンター用にノースカロライナ州に開発したメガソーラー
(出所:Apple)
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ネバダ州では電力メニューを「クリエイト」

 電力小売市場が全面的に自由化されていないカリフォルニア州、さらにオレゴン州では、限られた大規模電力需要家が、地域独占電力会社ではなく、直接IPP(独立発電事業者)から電力を購入できる「ディレクト・アクセス」というシステムがある。

 当初アップルはIPP開発・所有の既存の再エネ発電所から電力購入契約を結んだが、後に自社が開発した新規のメガソーラー(大規模太陽光発電所)から電力を調達するようになった。カリフォルニア州のメガソーラー「カリフォルニア・フラッツ」は、米ファースト・ソーラーがモジュール(太陽光パネル)提供とEPC(設計・調達・施工)サービスを担当し、連系出力は280MWとなっている。電力はアップルのデータセンターに供給されている。

 「PURPA法」や「ディレクト・アクセス」が適応されない、電力規制下にあるネバダ州では、地域独占の大手電力会社と提携し、再エネ100%を利用できる新しい電力メニューを「クリエイト」した。アップルが太陽光発電所の新設に関与し、地元の大手電力会社がその発電所を運営し、アップルに長期間、固定価格で新しい電力メニューとして販売する仕組みだ。このパートナーシップにより同社は今までにネバダ州に4サイト(合計320MW)の太陽光発電所を開発した。

 アップルは今後、全ての電力需要を自社でクリエイトした再エネプロジェクトからの電気で賄うことを目指している。