前回からシャツ専業メーカーとして業績を伸ばし続けているメーカーズシャツ鎌倉を紹介しています*1。「鎌倉シャツ」の愛称で多くのファンに親しまれている企業です。1993年の創業以来、ドレスシャツにこだわって5000円前後のほぼ同じ価格帯で、コストパフォーマンスが高いと評判のシャツを提供しています。2012年には米国ニューヨークにも直営店を出店しました。

2015年12月には、ニューヨークに2号店を出店した(写真:メーカーズシャツ鎌倉)
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 前回は、リーズナブルな価格で品質の高いシャツを生産・販売する鎌倉シャツのビジネスモデルに着目して、その取り組みを紹介しました。ファストファッションの興隆もあり、今でこそ当たり前になった「SPA(製造小売、specialty store retailer of private label apparel)」という業態を日本でいち早く採用し、「自ら作って、自ら売る」を体現してきました。商品の企画から販売までを一気通貫で自社で手掛ける業態です。

 この業態に至る出発点は、創業者である貞末良雄会長のシャツへのこだわりでした。メンズウェアの中で、最も大切であるにもかかわらず、自分が欲しいと思えるシャツは世の中に存在していない。ならば自分で作ろう。これが、新規ビジネスの出発点でした。そこから見えてきたヒットの要諦は次のようなものでした。

■前回の「ヒットの要諦」
その1:
「自分が欲しいものを作る」。そのぶれない信念こそが新しいビジネスモデルを切り開く原動力となる!

 鎌倉シャツは、アパレル業界では当たり前の「セール」を手掛けず、日本国内の縫製工場との協力関係による「メード・イン・ジャパン」にもこだわっているということを前回も紹介しました。今回は、この「メード・イン・ジャパン」へのこだわりについて、もう少し深く掘り下げていこうと思います。

日本だから実現できる加減

 前回、鎌倉シャツのビジネスモデルを支える基盤は、縫製工場との協力関係にあるということを説明しました。原価率の高い商品の生産と販売のバランスを管理し、かつコスト構造を最適化するために、商品の発注から納入までを迅速に対応する仕組みを縫製工場との信頼関係の中でつくり上げています。それを実現しているのが、作ったシャツを倉庫に収めるのではなく、工場から店舗へと直接納入する産地直送の仕組みです。

 生産と販売のバランスの調整を実現しやすいことが、鎌倉シャツが国内生産にこだわる大きな理由の一つになっています。メーカーズシャツ鎌倉の商品企画や製造を担当するグループ会社のサダ・マーチャンダイジングリプリゼンタティブ(SMR)で生産企画を務める佐野貴宏氏は、こう話してくれました。

「海外で商品を作るには、大きなロット数と時間が必要になります。もちろん、少ないロット数でも作ってもらえる海外の縫製工場はありますが、慣れないものを少ない数で作るとシャツの品質が安定しません。加えて、ロット数が少ない商品を物流費をかけて日本に持ってきても、トータルコストを考えるとなぜ海外で作っているのかが分からない状態になります。例えば、5000枚のシャツを急いで作らなければならない状況で、『シャツのこの部分を少しだけ調整して欲しい』と急に頼んでも対応できません」