細胞培養のコストを劇的に下げ、培養した細胞を機械の部品のように簡単に取り扱えるようにする。そんな技術を持つのが、東京大学発のベンチャー企業、セルファイバだ。技術を核としたスタートアップ企業を表彰する「J-TECH STARTUP 2018」のシード枠に選ばれた注1)

注1) 「J-TECH STARTUP」(主催:TXアントレプレナーパートナーズ)は、最先端のコア技術「Deep Tech」を基盤とした国内のスタートアップ企業を表彰するもの。2019年2月8日にはセルファイバも登壇する表彰イベントが開催される(詳細はこちら)。

 同社のコア技術は直径数百μmのゲル状のチューブ「セルファイバ」に、培養細胞を閉じ込める技術である。セルファイバの成分は、アルギン酸ゲル。このゲルは、ある程度の強度を持つので、内部から細胞が漏れ出さない。さらに、外部から細胞が成長するために必要な栄養素を透過する性質も持つ。

 こうした特徴により、効率的に細胞を培養することが可能だ。大量の細胞の培養は一般に、培養液の中で束縛のない形で行うが、大量の培養液と高度な衛生環境が必要で、コストがかかる。セルファイバを使った培養では、同じ規模の細胞を培養するのに、装置設置面積として10分の1で済むという。さらに、細胞の取り扱いも簡単になるので、作業の自動化や品質の安定化が容易である。こうした理由から、細胞培養の大幅なコスト削減が見込めるという。

 この技術の活用でまず、期待されるのが再生医療や免疫細胞療法、薬剤検査などの分野だ。再生医療では、本人または他人のヒトの細胞を培養し、これをヒトの体に戻すことで、欠損した機能を再生するもの。免疫細胞療法は、免疫細胞を外部で培養して体に戻すことで、ガン細胞への攻撃力を増すというものだ。また、薬剤検査では目的の部位の細胞を培養し、これに対して薬剤の効果があるかを評価する。いずれも培養のコストが要因で治療費や実験費用が高額になり、利用が限定されていたが、セルファイバを使うことで、この壁を壊わせる可能性がある。

■変更履歴
本記事では、セルファイバからの申し入れにより、図版および将来計画などに関わる本文を一部修正しました。 [2019/1/12 16:30]