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次世代福祉、コストから経済への転換

シェルから“時代”が透けて見える「カッコイイ杖」

「超福祉展2018」 インクルーシブ・デザインの現場(1)

2018/11/02 05:00

土屋季之=ライター

 2020年の東京パラリンピックの開催を契機に社会の変革を目指す「超福祉展(正式名称:「2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展」)」(2018年11月7日(水)~13日(火)渋谷ヒカリエ他)が、今年も渋谷の街にやってくる。「カッコイイ」「カワイイ」「ヤバイ」をキーワードに、優れたプロダクトやデザインの力で、障害者や高齢者などマイノリティーとマジョリティーとの間にある“意識のバリア”を乗り越え、福祉のあり方を変えようとする取り組みだ。

 超福祉展に登場する技術、製品、ソリューションは、従来の福祉の枠にとどまらず、モノづくりの未来、これからの社会のあり方を考える多くの示唆にあふれている。優れた展示が揃うが、とりわけユニークなアイテム、ソリューションをピックアップし、紹介する。第1回は、デザインばかりか企業の姿勢自体が“超福祉的”で、時代を象徴する杖「BONLABウォーキングステッキ」だ。

「BONLABウォーキングステッキ」
(写真提供:BONLAB)

「手を乗せる」という新しい体験

 BONLABウォーキングステッキは、シェル構造のグリップを持った杖だ。このシェル構造のために、ユーザーはグリップを握るのではなく、「手を乗せる」ように使えるのだという。

 従来の杖は、極端に言えば棒をグリップにしたようなもので、「握る」ようにしか使えない。そのためユーザーは常に力んでしまい、疲れやすくなる。しかし、このシェル構造のグリップは断面がU字型をしており、自然とそこに指を掛けるようにして持つことになる。逆にステッキを突くときは、手は自然とグリップの上に乗せるだけになり、疲れることなく使えるのだ。

廣田尚子氏。ヒロタデザインスタジオ代表、女子美術大学教授、多摩美術大学客員教授。RED DOT DESIGN AWARD、IF Design賞、グッドデザイン賞等国内外の受賞歴多数。東京ビジネスデザインアワード審査委員長、グッドデザイン賞審査委員も務めている。プロダクトデザインにとどまらず、ビジネスデザイン全体を包括的に手がけている。

 デザインを担当したのはプロダクトデザイナーの廣田尚子氏。廣田氏は2カ月に渡るユーザー調査で、高齢者が杖を使うのを嫌がる理由のひとつが、握ることで疲労してしまうことにあることに気づいたと話している。

 「握り上げるように使っていては、それは確かに疲れちゃいますよね。体に不調があって使わなければならないのに、疲れてしまうのでは本末転倒。握らずに、でもストレスなく使えるような形状を、何度も仮説と検証を繰り返して探しました」(廣田氏)

 シャフトはマグネシウム合金製、グリップはポリカーボネート製と軽さにもこだわった。また、高いデザイン性を持っているのもユーザーの声に応えたものだ。グリップやシャフトのシルエットはシックだが、強すぎない程度にセンスを主張する。カラーはシャフトが4色、グリップが5色。組み合わせることで20パターンを楽しむことができる。

 「ステッキを持つと憐れまれているみたいで嫌だという人が多いんです。でもステッキがファッションアイテムになれば、ステッキでのおしゃれを楽しむことができるようになります。むしろステッキがあったほうがおしゃれだと思えるようになれば、利用も広がるはずです」