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渋谷から“超福祉”を発信、ピープルデザイン研究所 須藤シンジ氏に聞く

2016/10/20 00:00

浅野 智恵美

 「2020、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展(以下、超福祉展)」が2016年11月8〜14日の7日間にわたり開催される。超福祉展はNPO法人のピープルデザイン研究所が主催するイベントで、今年で3回目となる。昨年の来場者数は3万2000人と会場の渋谷ヒカリエ「8/」(東京・渋谷)の最高来客数を記録。国内外から注目されている、今ホットなイベントだ。

 超福祉展は、障害者をはじめとするマイノリティーとマジョリティーの間にある“心のバリア”を“クリエイティブに壊す”をコンセプトにしている。思わず使ってみたくなる「カッコいい」「カワイイ」デザイン、最新の「ヤバイ」テクノロジーを駆使した福祉機器の展示・体験、そして様々な角度から福祉を考える講演者によるシンポジウムで構成される。

 超福祉展では、マイノリティーの切り口として、「障害者」「LGBT(レズ・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの頭文字)」「子育て中のお母さん」「認知症を中心とする高齢者」「外国人」の5テーマを掲げている。

 ピープルデザインのWebサイトには「シブヤが100人の街だったら?」と題したページがある。100人のうち、2.5人はベビーカーを押すお母さん、5人は未就学児童を連れたお母さん、5.2人はLGBT、5.8人は障害を抱えた人、23.3人は高齢者、1.6人は外国人。そういったマイノリティーに対し、違いを受け入れ、助ける必要があれば助け、理解する必要があれば理解をする “気持ちのデザイン”を目指しているのだ。超福祉展はマジョリティーとマイノリティーが混ざり合うキッカケをつくり、心のバリアを壊していくことを目指している。

 今年は過去2回の「福祉機器展示」と「シンポジウム」という2軸の展開に、より“街の外に出していこう”という企画性を加えているという。今回の超福祉展のコンセプトや狙いについて、ピープルデザイン代表理事・須藤シンジ氏に話を聞いた。

超福祉展を手掛けるピープルデザインの須藤シンジ氏。今までの福祉の常識をくつがえす“超福祉”を提唱する。
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第3の目を介した“新次元”の展示空間とシンポジウム

 昨年(2015年)の第2回までは、ピープルデザインが自らコンテンツのプロデュースやディレクションを担ってきた。しかし、今回からは第3の目を介して、より客観性を持たせ、イベントの可能性をさらに1ステップ高めるため、福祉機器展示とシンポジウム、それぞれに外部から2人のディレクターを招いた。

 福祉機器展示には、デザイン・コンサルティング企業のタクラム・デザイン・エンジニアリングでディレクター/デザインエンジニアを務める緒方壽人氏が起用されている。緒方氏はもともと工業系の技術開発者。その緒方氏のディレクションによる企画展示を行う予定だ。その狙いについて須藤氏は、こう話す。

「これまで我々は、福祉機器と称されるものがテクノロジーによって、『かわいそうなもの』から『“憧れ”を伴うような、すごい技術』という驚きに変わることに主観を置いていました。しかし、伝え方が表面的であったことは否めない事実です。今回、ご自身が技術開発者である緒方氏を起用することで、目に見えているテクノロジーのすごさ以上に、その製品が“いかにして生まれたのか”というプロセスにフォーカスできる。プロセスそのものを説明する要素を空間に取り入れてくれる。こう思って、ディレクションをお願いしました」

 シンポジウムでは、講演者のキャスティングを含めたトータルプロデュースを、タイムアウト東京 代表取締役の伏谷博之氏が手掛ける。タイムアウト東京は、1960年代後半に英国で創刊され、100を超える都市で展開されているタウン情報誌「タイムアウト」の東京版を手掛けており、今回の超福祉展の共催企業でもある。須藤氏は伏谷氏との連携について、こう説明する。

「“タイムアウト”は日本以外の先進国では比較的メジャーなタウン情報誌です。ロンドンオリンピック・パラリンピックの際、タイムアウトは“小さなお子さん連れでも入れるレストラン”や“車いすでアクセスできる飲食店”といった、社会的弱者と言われる方々にフォーカスしたムックを発行しました。それは、私たちが提唱する“ダイバーシティー(多様性)な街づくり”を支える情報供給の在り方として、非常にリスペクトできるものでした。伏谷氏にプロデュースをお願いすることで、ダイバーシティーを念頭に置いた言語で情報を発信してくれる、そんな講演者をキャスティングいただけるという期待と、シンポジウムそのものへの編集力といった期待があります」

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