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車いすバスケが、日常に根付く日を目指して

パラスポーツが抱える課題と、その先にある未来(後編)

2016/04/08 00:00

久我 智也

「パラリンピックの花形競技」といわれる車いすバスケットボール(車いすバスケ)。リオデジャネイロ・パラリンピックでは日本男子代表が出場し、好成績が期待される。しかし、この競技は多くの課題も抱えている。前編に続き、関東車椅子バスケットボール連盟代表理事を務める高橋俊一郎氏の話を交えながら、車いすバスケが抱える課題、そしてその先の未来をレポートする。

競技環境向上のために不可欠な「大会の育成」

 前編で紹介したように、2015年10月に行われた「三菱電機2015 IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ千葉」では男子日本代表が3位でリオデジャネイロ・パラリンピック出場権を獲得し、大会の運営も世界から賞賛された。

 しかし、大会の成功の影で見逃せないこともある。女子日本代表の凋落だ。2000年のシドニー・パラリンピックでは銅メダルを獲得したこともある女子日本代表だったが、IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ千葉では1勝も挙げることができず、2大会連続でパラリンピック出場権を逃した。女子日本代表の橘香織ヘッドコーチは大会後、選手が競技にかける時間の少なさ、他国の成長スピードの速さを敗因に挙げたが、敗因はそれだけではない。大きな問題の一つが「競技人口の少なさ」だ。

 現在、日本車椅子バスケットボール連盟(JWBF)に登録しているクラブチームは74チームだが、そのうち女子は7チーム、会員数は67人だけである(いずれも2015年1月末時点)。その中には、国際試合で1試合51得点を記録したこともある網本麻里選手のような世界レベルの選手が存在するものの、チームとしての総合力を上げ、再び世界に通用するようになるには、底辺を拡大し、競技人口を増やすことが必要不可欠だ。そして同時に、既に車いすバスケをプレーしている選手全体の底上げも必要となる。

 そのために車いすバスケ界が力を入れていることの一つが「大会を育てる」ということだ。IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ千葉の大会事務局長として開催に尽力した高橋俊一郎氏(関東車椅子バスケットボール連盟 代表理事)は、こう話す。

「車いすバスケを広めるためには、選手たちが頑張っている姿を見てもらうことが必要です。国内クラブの最大の目標は『内閣総理大臣杯争奪 日本選手権大会』ですが、この大会は年1回。それ以外にも、選手たちの目標となるべき大会を増やすことで、モチベーションを高める仕掛けをつくらなければならないと思っています」

 そこで、関東連盟ではさまざまな大会の企画運営を行っている。例えば「関東カップ」という大会では、国内のクラブだけではなく、海外のクラブチームも招いている。高いレベルで切磋琢磨すると共に、順位決定戦を行うことで最低でも3試合の実践経験を積めるようにしている。

 また、レベルの高い大会を増やすだけではなく、参加する意義のある大会の増加も図っている。その代表例が「High8選手権大会」だ。車いすバスケは障害のレベルが偏らず、公平な条件でゲームを展開するために、コート上の5人の持ち点が14.0点以内に収まるようにしなくてはならないが、High8選手権では、合計点が8.0点以内に収まるように定めている。ローポインターと呼ばれる障害が重い選手の出場機会を増やし、彼らの技術向上につなげることを目的としているのだ。

 こうした大会を増やすことで、選手たちの意識を高め、競技のレベルをアップさせていく。そして大会の魅力が上がれば、スポンサーも付きやすくなる。それによって競技環境の向上へとつなげていく。高橋氏は、そんな好循環を目指している。

男子とは対照的に悔し涙を流すことになった女子日本代表。2020年東京大会に向けて復権が期待される。
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