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「障がいゼロ社会」になっても価値ある組織に、ブラインドサッカー協会の覚悟

日本ブラインドサッカー協会事務局長 松崎氏に聞く(後編)

2019/02/07 05:00

久我智也=ライター

 障がい者スポーツ団体では稀有な「自立運営」を行っている日本ブラインドサッカー協会。同協会は、2020年東京パラリンピック、そして2020年以降に向けて、今何を考え、どのような取り組みしていくのか。2018年11月4日に開催された「ブラインドサッカーチャレンジカップ2018」の後に実施した日本ブラインドサッカー協会専務理事兼事務局長・松崎英吾氏のインタビューを通して、ブラインドサッカーの未来を探る。(取材日:2018年11月9日)

(前編はこちら

2018年11月4日に開催された「ブラインドサッカーチャレンジカップ2018」では、強豪アルゼンチンを相手に逆転負けを喫した日本代表。収穫を得た一方、選手層の強化は課題となっている
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選手層強化のために「エリート育成」に着手

「ブラインドサッカーチャレンジカップ2018」では世界ランク2位のアルゼンチン代表から初めてゴールを奪うなど、チームとして収穫があったと思います。ただ試合後、高田敏志日本代表監督からは選手層を厚くしていくことが必要との言葉も聞かれました。選手層強化のために、協会としてはどのような手段をお考えでしょうか。

日本ブラインドサッカー協会 専務理事兼事務局長の松崎英吾氏。大学生時代にブラインドサッカーに出合う。卒業後は出版社に勤める傍らでブラインドサッカーに携わっていたが、2007年に事務局長に就任。ブラインドサッカーを通して「視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会」を実現するために、さまざまな事業を推進している
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松崎 良い選手を生み出していくために、ここ数年間、グラスルーツからエリート選手を育成していく事業にはしっかりと投資をしています。これは2020年だけを意識した話ではなく、2024年や2028年などを見据えた上で長期的な視野に立って高い競技力を獲得するための取り組みです。

 エリート選手の育成と言っても、ブラインドサッカーの競技人口は決して多くはないので、何十万、何百万人のピラミッドの中から上位の選手に特化して育てていくというわけではありません。若い頃からプレーしている選手たちをそのまま伸ばしていくことに注力し、その選手たちが将来、代表選手になるような取り組みを行っているところです。

今回の大会では、人工芝や大型LEDビジョンに投資をされましたが、今後新たに投資を考えているものはありますか。

松崎 現段階では具体的にこれに投資をしていくというものはありませんが、今回投資したものを有効活用していきたいと考えています。例えば大型LEDビジョンを他のパラリンピックスポーツ組織に貸し出したり、企業運動会を実施したい企業に人工芝を貸し出すといった構想は持っています。

 私たち自身、外部から提案をいただく機会もあるのですが、「本当に困っているのはそこではないんだけど…」と感じることも多いです。きっと、他の障がい者スポーツ組織や、規模の小さなアマチュアスポーツ組織も似たような場面に出くわしていることが多いと思います。であれば、同じような悩みを共有できる我々が他団体に設備をレンタルしていき、ある程度の対価をもらえれば互いにメリットを得られるはずです。そうしたことが可能な領域に投資していくことは考えています。また、単に機材をレンタルするだけではなく、その機材を使ってどういうことをしていくかというノウハウも我々は持っていますので、その知見も含めて提供していくと、良いサイクルを作っていけるのではないかと考えています。

日本ブラインドサッカー協会では、「ブラインドサッカーチャレンジカップ2018」を機に大型LEDビジョンを新たに購入。ブラインドサッカー協会が使用する際にはルール説明や観戦時の注意事項を投影しているが、そのコンテンツも自分たちで制作しているという
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