記事一覧

チャレンジド・スポーツを支える人びと

選手のパフォーマンスを支える車いすの秘密

メーカーの現場担当者が抱く競技と製品への思い

2016/02/15 00:00

久我 智也

メーカーがメカニックを派遣するメリットとは

 前述したように、日本代表のメカニック帯同は2014年の世界選手権からであった。その背景には、選手たちとメーカーをつなぐ、元日本代表選手の存在があった。松永製作所のスポーツ向け車いすブランド「MP」のマネージャーを務める神保康広氏だ。

 車いすバスケのトップ選手として活躍し、1992年のバルセロナパラリンピックから2004年のアテネパラリンピックまで、4大会連続で出場を果たした神保氏。彼は、松永製作所から代表チームにメカニックを派遣するに至った経緯をこう語る。

「数年前から松永製作所の競技用車いすの営業を担当して、次第に選手にも使ってもらえるようになり、2014年の世界選手権では日本代表のうち、8人の選手が使ってくれるまでになりました。あるとき、日本代表の及川晋平ヘッドコーチから『トレーナーが選手の身体のケアをするように、車いすのケアをしてくれるスタッフも必要不可欠になる』と相談を受けたんです。それをキッカケに、会社からメカニックスタッフを派遣することになりました」

 松永製作所にとって、代表チームへの社員の派遣はボランティアのような形であり、すぐに会社の直接的な利益に結び付くわけではない。では、企業としては、どのようなメリットを見込んでいるのだろうか。

「松永製作所には、良い製品をなるべく良心的な価格で世の中に提供していくということに加え、アフターサービスをしっかりとしていきたいという考えがあります。代表チームのメカニックを手掛けることは、製品の付加価値を生み出すことになりますし、きちんとアフターサービスをする会社という支持を得ることにもつながります」

 代表チームのメカニックを行うことでブランド力を高め、また、トップクラスの選手の声を製品開発に生かすこともできる。今大会では男子で9人、女子で5人の選手が松永製作所の車いすを使っていた。それは、神保氏や上野氏をはじめとする企業としての努力が実を結んだからだろう。

 今回紹介したOXエンジニアリングや松永製作所をはじめとする車いすメーカーの関係者が、リオでも日本代表を支え、チームに貢献することが期待される。

松永製作所の競技用車いすブランド「MP」のブランドマネージャーである神保氏。現在、仕事として車いすを広めていくとともに、障害者スポーツの普及活動にも携わっている。
[画像のクリックで拡大表示]
■変更履歴
掲載当初、記事中で国枝慎吾選手の名前を誤って記載していました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2016/02/16 19:10]