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チャレンジド・スポーツを支える人びと

選手のパフォーマンスを支える車いすの秘密

メーカーの現場担当者が抱く競技と製品への思い

2016/02/15 00:00

久我 智也

日本代表を陰で支えたメカニックの存在

 選手たちの「足」となる車いすだが、冒頭にも記述したように、車いすバスケは激しい衝突が不可避のスポーツだ。それがこの競技の魅力の一つではあるが、何度も衝突を繰り返すと、当然、車いすは破損してしまう。トップクラスの選手になるとプレーの激しさは増すため、車いすは2年ほどしか持たないのだという。

 ときには、試合中に破損することもある。そうした際に、迅速に対応できるようにするため、メカニックを帯同させるチームもある。アジアオセアニアチャンピオンシップ千葉では、男子日本代表にも陰でチームを支えたメカニックの存在があった。岐阜県に本社を置き、競技用車いすを製造する松永製作所の上野正雄氏だ。

「私の仕事は、車いすの状態を安定させることです。選手が車いすにストレスを感じてしまうとプレーにマイナスの影響を与えてしまいます。常に車いすの状態を一定に保つことが必要なんです」(同氏)

 選手たちは練習から常に激しいプレーを繰り返しているため、車いすには急激な動きや衝突、転倒による負荷が掛かっている。このため、小さな異変を放っておくと、いざというときの大きな故障につながりかねないのだ。

 例えば、ネジが少し緩んでいたり、消耗品であるキャスターにヒビが入ってしまったり、ホイールを本体につなぐシャフトが曲がってしまったり。試合中に異変を発見したら、即座に処置を施すことがチーム帯同メカニックとしての上野氏の仕事である。

 異変が生じる箇所は、選手によっても異なるという。

 例えば、身長185cmの重量級パワーフォワードである日本代表の千脇貢選手は、ゴール下でリバウンドを競ることが多い。同選手のような体格になると、ボールを奪い合うために伸び上がって着地するだけでフレームが傷むことがあるそうだ。

男子日本代表のメカニックを務めた上野氏は、チームの一員として銅メダルを首にかけた。メカニックの仕事は非常にやりがいがあり、「練習の段階からもっと顔を出したい」と考えているという。
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