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チャレンジド・スポーツを支える人びと

選手のパフォーマンスを支える車いすの秘密

メーカーの現場担当者が抱く競技と製品への思い

2016/02/15 00:00

久我 智也

海外でも人気のブランドに

 OXエンジニアリングへの取材中、興味深い光景に出くわした。大会に参加しているサウジアラビアのコーチがオフィシャル修理班のブースに訪れ、同社の車いすをチームとして購入したいというのだ。日本の場合は、使用する車いすのメーカーは各選手の判断に任されているが、このように、代表チームが一括購入を行う場合もあるのだという。特に、資金が豊富な中東系の国ではそうした例が多いという。

 こうした、アジアの車いす事情について話してくれたのは、OXエンジニアリングの海外業務担当の中村勝信氏だ。

「海外の選手からは、軽さや操作性について評価を受けることが多い」(同氏)というOXエンジニアリングの車いす。海外での人気が高いのは、ブランド力によるところも大きい。

「OXエンジニアリングは、バスケだけではなく、マラソンなどのレース競技やテニス、クロスカントリースキー、バイアスロン用の車いすなども手掛けています。1996年のアトランタ・パラリンピックのころから競技用車いすの提供をはじめて、これまで、夏季・冬季合わせて106個のメダルを獲得してきました。海外での知名度も上がり、うちの車いすを欲しいと言ってくれる国もあるんです」(中村氏)

 ロンドン・パラリンピックのテニス男子シングルスで金メダルを獲得した国枝慎吾選手や、女子車いすテニスで最年少グランドスラム制覇を達成した上地結衣選手なども、OXエンジニアリング製の車いすを使用している。

 一方、海外の顧客とやり取りをする際には、こんな苦労があるという。

「国によっては、車いすに対する意識が低く、無茶な使い方をして故障させてしまうことや、そのことについてクレームを受けることもあります。不良品というわけではないのですが…(苦笑)。でも、これまでの取り組みで国や環境によって不具合が出やすい部分などが分かっていますので、故障しにくいように、あらかじめカスタマイズして納品するようにしています」(中村氏)

 さまざまな競技や国に車いすを提供してきた経験が、車いす競技の活性化を下支えしているのだ。リオデジャネイロ・パラリンピックで、OXエンジニアリングの車いすがどこまでメダル獲得数を伸ばせるかにも注目だ。

OXエンジニアリングの海外業務担当を務める中村氏(右)。かつてはヤマハ発動機に勤め、海外赴任の経験も豊富で、現在でも海外とのパイプを持つ。
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