2015年のラグビーワールドカップ(W杯)で優勝候補・南アフリカを破り世界を驚かせたラグビー日本代表。この躍進は、戦術、スキル、フィジカル、そしてメンタルの4つのトレーニングを徹底して行うことで成し遂げられた。このうち、メンタルトレーニングのコンサルタントを任されたのが、園田学園女子大学教授の荒木香織氏だ。荒木氏が「IT Japan2016」(主催:日経BP社、2016年7月6日〜8日)で語った、日本代表を変えた心の鍛え方についての後編を、談話形式でお伝えする。

南アフリカとの対戦を楽しむことでプレッシャーを力に

 ラグビー日本代表の個々の選手に対して、どのようなメンタルトレーニングのアプローチをとったのかを紹介します。代表的な取り組みは、「プレッシャーとの付き合い方」について伝えることでした。

講演を行った園田学園女子大学教授の荒木香織氏。メンタルトレーニングコンサルタントとして数多くのアスリートにプログラムを提供するほか、企業研修や教育機関などでのセミナーも行う。ラグビー日本代表には2012年から参加。日本代表へのコンサルテーションを行い、W杯での躍進を支えた
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 プレッシャーは、外的なものと内的なものに分けられます。例えば、周囲からの期待や時間の制限、金銭に関することなどが外的なプレッシャーです。一方、内的なプレッシャーとは、自分自身の中の目標や、物事の受け止め方(受容感)に由来するものです。プレッシャーは触れないですし、見えません。それをどう受け止めるかは、自分自身が決めることですから、プレッシャーは基本的に選手自身がつくり出すものです。

 例えば、「エディーさんに叱られることがプレッシャーです」という選手がいました。けれど、「エディーさんに叱られる」と考えるか、「エディーさんが期待してくれるからコメントをくれる」と思うかで、その人に与える影響は変わります。つまり、プレッシャーは、受け取り方を変えることで良いものにも悪いものにもなるのです。ですから、普段からプレッシャーを良い方向に受け取れるようにトレーニングを行っていきました。

 南アフリカ戦の前にも、「これだけ準備をしてきたのだから必ず勝てる」と考える一方で、それがプレッシャーになってしまうという声もありました。でも「ワールドカップという舞台に立てるという素晴らしい機会を得ることができたので家族、恩師、友人、チームメイトから期待してもらえる。その期待をエネルギーに変えることで、最高のプレーができる」と考えることで、日本代表はプレッシャーを力に変えていったのです。