記事一覧

スポーツ、世界への突破力

「英語スコア悪いと日本代表になれません」、フェンシング協会・太田雄貴会長の人材戦略

2019/05/29 05:00

内田 泰=日経 xTECH

「2021年以降、英語検定で協会が定める最低スコアを満たさない選手は日本代表に選びません」――。日本人初のフェンシング競技の五輪メダリストで、現在は日本フェンシング協会会長を務める太田雄貴氏は2019年4月25日、年間活動方針の記者説明会で新制度の導入を発表した。企業ではTOEICなどの英語検定のスコアを、昇進・昇格の条件にしているところも少なくないが、スポーツ界では初の試みだ。“マイナースポーツ”のビジネス化に向けて大胆な改革を矢継ぎ早に打ち出している太田氏に、導入の狙いを聞いた。(聞き手:内田 泰=日経 xTECH)

2018年12月9日に開催された「第71回全日本フェンシング選手権大会個人戦 決勝戦」の様子。エンタメ性にこだわり、ロンドンのグローブ座を参考に設計された東京グローブ座で開催。S席5500円を含む有料のチケットは発売開始から40時間で完売した (写真:竹見脩吾)
[画像のクリックで拡大表示]

英語検定のスコアを企業での昇進・昇格の条件にするという話はよく聞きますが、日本代表選手の選考基準に導入する狙いは何でしょうか。

公益社団法人・日本フェンシング協会会長の太田雄貴氏。国際フェンシング連盟副会長を兼務。2008年の北京五輪でフェンシング男子フルーレ個人に出場、日本人選手初の決勝戦に進出し、銀メダルを獲得。2012年ロンドン五輪の男子団体で銀メダル。2015年の世界選手権では個人で金メダル。2017年8月に日本フェンシング協会の会長に就任 (写真:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]

太田 この前提に日本フェンシング協会の会長としてのビジョン「Athlete Future First(アスリート・フューチャー・ファースト)」があります。スポーツ界ではよく、アスリートの事を最優先に考える「Athlete First(アスリート・ファースト)」という言葉が使われますが、私はアスリートの未来を第一に考えたい。フェンシングを通して人間的に成長した選手たちが、引退後もさらなる活躍をしてくれることが、競技団体にとっての成功だと考えています。

 そのために、引退後に世の中を生きていくのに必要なスキルを身に着けてほしい。例えば、それは戦略的思考であったり、マーケティング力であったりします。マーケティング力については、選手のユニフォームに1枠、自らが営業してスポンサーのロゴを付けていいことにしました。個人で資金調達ができるのです。その際、協会は選手から1円も徴収しません。

 英語検定も「Athlete Future First」の一環です。今回ベネッセホールディングスと提携し、同社が運営する英語検定試験「GTEC(ジーテック:スコア型英語4技能検定)」を選手に受けてもらい、2021年以降、世界選手権の日本代表選考基準に試験成績を取り入れます。具体的には、語学力の国際標準規格「CEFR(セファール)」でA2(英検準2級相当)、簡単に言うと高校卒業レベル程度のスコアを最低点とします。

 ただし、救済案も用意します。セファールは「読む・聞く・話す・書く」の4技能の総合点で評価しますが、総合点が最低点に到達しない場合、英会話で所定のスコアを超えていればOKとします。

 これを通じて、選手が競技だけをやっていればいいという姿勢から、競技以外の事に興味を持って学ぶ姿勢を身に着けてほしいと考えています。