記事一覧

鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」

米大学スポーツ界を震撼させた歴史的判決の波紋

「学生アマチュア規定は違法」、NCAA敗訴

2016/01/12 00:00

鈴木 友也

出典: 日経ビジネスオンライン、2014年9月10日
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

アマチュア規定の裏に40億ドルのライセンス市場

 この歴史的判決が下された裁判は、通称“オバンノン訴訟”と呼ばれています。かつてUCLAのバスケットボール部で全米制覇するなど活躍したエド・オバンノン氏が、卒業後、自らの与り知らぬところでテレビゲームなどに自分の名前や肖像などが使われていることを知りました。

 NCAAのライセンス商品の市場規模は40億ドル(約4000億円)とも言われています。同氏は、DVDやテレビゲームなどNCAAライセンス商品に過去の学生選手の肖像権が無許可で利用されている一方、その利益が学生に還元されていないのは不当として、学生への対価の支払いを禁ずるNCAA規定は取引制限に当たり反トラスト法違反(日本の独占禁止法に当たる)であると訴えたのです。このオバンノン訴訟は集団訴訟として認められ、原告には数千人の学生選手が名を連ねています。

 実は、当初この裁判ではNCAA以外にも、テレビゲームを制作していたEAスポーツ社やNCAAの代理店として学生選手の肖像権を販売していたCLC(Collegiate Licensing Company)社も被告として名を連ねていました。しかし、この2社は早々に和解に応じており、テレビゲーム内にアバターとして登録されていた10万人以上の学生選手に対して、総額約4000万ドル(40億円)の和解金の支払いに同意しています。

 NCAAは、原告側の主張に対して「学生選手に報酬を禁ずるアマチュア規定は、NCAAの教育的価値やビジネスモデルを守るために必要不可欠である」などとして徹底抗戦の構えを見せていました。そして、公判前の証拠開示手続きに5年近い歳月を費やし、2014年6月9日から公判が開始された注目の裁判の判決が8月8日に下されたのです。

最悪のシナリオは免れたNCAA

 カリフォルニア州連邦地裁のクラウディア・ウィルケン判事は、その99ページにも及ぶ判決文の冒頭にて、争点となっているアマチュア規定は「NCAAのディビジョンI校の教育的・運動的機会において不合理な取引制限であると認められる」「NCAAが主張するアマチュア規定の競争促進的効果は、より制限的でない手段により実現し得る」として、これが反トラスト法違反に当たるとの判決を下しました。

 しかし、判決文をよく読んでみると、同判事が学生選手への報酬の支払い(Pay for Play)を無制限に認めているわけではないことが分かります。判決では、NCAA所属大学が学生選手への肖像権利用に対する対価の支払いを禁ずる規則の制定を禁じている一方で、NCAAによる新たな「より制限的でない」ルール設定を求めています。つまり、新たな枠組み作りについてNCAAに一定の裁量権とその合理性を認めているのです。