“遠隔介護”の時代へ

2018年度同時改定でテレビ電話・テレビ会議が解禁

2018/05/08 10:00
山本 拓真=カナミックネットワーク 代表取締役社長

 2018年4月に診療報酬と介護報酬の同時改定が実施された。これまで本コラムでは、今回の同時改定における医療・介護連携でのICT活用シーン介護ロボットの活用シーンについてそれぞれ掘り下げてきた。今回は、同時改定において“解禁”された介護サービスのICT活用について触れていきたい。

「テレビ会議+情報共有システム」での運用を

 今回の同時改正で解禁されたのは、テレビ電話・テレビ会議である。他の産業ではテレビ会議は一般的であったが、特に介護業界においては今まで活用が進んでいなかったのである。技術の進歩によって、介護業界でテレビ会議が公的に認められるようになったのは大きなイノベーションであると思う。

 例えば、リハビリテーション会議でテレビ会議を行う形が提示されている。医師・PT・OT・ST・看護職員・介護職員などがリハビリテーション会議を行う際に、医師がテレビ電話で参加する形がOKになった。これによって医療過疎地などに住む高齢者に対して、医師の移動の負担なく説明をできる環境が整ってくるはずだ。限られた医療・介護従事者の人数で、これから増えてくるよりたくさんの要介護者をケアしようとする場合に、こういった移動時間や場所の制限から開放される事はとても有意義である。

ICTを活用したリハビリテーション会議への参加(図:厚生労働省の資料より)
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 ただし、テレビ会議だけIT化されて他の帳票類が紙運用であると、結局郵送やFAXなどでさまざまな職種の事務の手間は増える一方である。「テレビ会議+情報共有システム」の両方の活用でもっと効率化されていくことが望ましい。

「医療+介護+IT」のパッケージで海外展開を

 このようなICTを活用した遠隔による医療・介護は、やっとテレビ会議システムやクラウドの活用が始まったところだ。他の産業でのIT活用に比べればまだまだ遅れていると見えるだろう。遠隔医療(診療)も遠隔介護も初歩的な解禁がなされたにすぎず、これからもっともっと現場で実証を繰り返して現場で使える仕組みを増やしていかないといけない。

 こうした中、カナミックネットワークは国立大学法人旭川医科大学に「遠隔医療・介護共同研究講座」を2018年4月に設置した(関連記事)。遠隔医療で25年以上の実績を有し、遠隔医療センターが学内にある旭川医科大学と、遠隔医療や遠隔介護領域でのICTやIoT活用の実証実験を始める。テレビ会議だけではなく、さまざまな技術やセンサーを活用して、遠隔での手術支援や治療支援、見守りなどを実現するための研究を始める。

 まだまだ風穴が開いたばかりの医療・介護業界のICT活用だが、現場で研究を繰り返していくことで世界に先駆けた遠隔医療・介護のパッケージ化の実現が可能だと思う。政府もアジア健康構想などで「日本式介護」の海外輸出を目指しているが、やはり医療なき介護はないと考えられるため、「医療+介護+IT」の3つをパッケージにすることで海外展開をしていく形がよりよいのではないかと考える。

「フレイル予防」の観点での改定にも注目

 もう一つ、今回の同時改定での注目点として、介護の質に対する評価の拡充についても触れておきたい。今まで、各介護サービスに対しては「ストラクチャー評価・プロセス評価・アウトカム評価」のそれぞれについて、加算される内容にバラツキがあった。

 しかし、今回の同時改定によって、ほぼ全てのサービスにリハビリ(機能向上連携)や栄養に関わる加算が整備された。高齢化に伴う虚弱化を防ぐ目的を全てのサービスに持たせることは、各サービスの目的の共通化において重要なメッセージであると思う。

主な介護サービスにおける介護報酬上の質の評価項目(図:厚生労働省の資料より)
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 これはまさに、昨今注目されている「フレイル予防」の観点での法改正であると受け止めている。心身機能の向上および生活機能や社会性の向上という観点で、全ての介護サービスが同じ方向を向いてプランニングされていくことで、高齢者が陥りやすいフレイルを予防していけるのではないかと考える。

 このように多職種が同じ方向を向くことが重要視されてくると、他法人の多職種がどう考えてプランを立てているのか、どう個別サービス実施の評価をしているのか、などといった情報をできるだけリアルタイムに知りたくなってくるはずだ。つまり、今後は医療・介護サービス事業者がICTを利用して情報共有をしていくシーンと情報量が増えてくることが想像できる。