イラスト:ニシハラダイタロウ
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 開発する製品をより良くしようとするのは当たり前。しかし、保有する技術やノウハウを駆使するだけでは限界もある。このとき、思い切って他業界や他分野の技術を導入して全く新しい切り口で開発を進めるのは、案外有効である。ところが、なじみのない他業界・他分野の技術やノウハウを導入しようとするときには、思いのほか慎重になってしまうことがある。

 確かに、未知の技術やノウハウを導入するには勉強しなければならないから大変だし、相当の勇気も必要だ。慣れ親しんだ技術やノウハウなら分かっているからいいが、未知なものに対する不安があっても仕方ないだろう。

 だが、知らないだけで諦めてしまうのはいかがなものか。やってみなければ分からないのにやる前からダメな理由を並べ立てる、いわば“食わず嫌い”になってしまうのは、いかにももったいない。

 このようなとき私は「これは他流試合である」と考える。

 剣術や弓術、馬術、槍術など流派がある武術では、時に他流試合をすることがある。他の流派と試合をすることで、他流派の技術に学ぶのである。同じように私は、開発においても他流試合をすることが大切だと考えている。そして、これは原理・原則である。

 いつも同じ流派の者と稽古や試合をしていると無意識のうちに相手の出方や攻防の技術が見えてきて、素早く対応することができるようになる。これが技術の向上ということになるが、あくまで同じ流派の中でのこと。他流派においては、最初からできるはずはなく、予想しないことだらけである。まして、こちらの技が全く通用しないこともある。

 だから、他流派の者と稽古や試合をするのは、それまで知らなかった素晴らしい技や決まり手を知る、すなわち、予想もしない技術に出合うチャンスだと思えばいい。逆に、こちらは平易だと思っていた技や決まり手が、相手にとっては予想外にすごいこともある。つまり、他流試合に出掛けると、意外なことに出合えるのである。