田中 栄=アクアビット 代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー
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 2016年1月、経済産業省は東京証券取引所と共同で、社員の健康増進に積極的に取り組んでいる上場企業26社を「健康経営銘柄」として選定しました。政府は今後、これを株式市場における新たな評価指標として認知させていく、と宣言しています。

 さらに融資でも、日本政策投資銀行は「DBJ健康経営(ヘルスマネジメント)格付」融資という制度を設けています(参考資料)。これは従業員の健康配慮に優れていると認められる企業に対して、特別な低利融を行うというものです。

 健康への取り組みによって、金利に差がつく時代が始まったのです。実際、既に64社に対して「DBJ健康経営格付」に基づく融資が実行されています。

 さらに政府は、2016年から上場企業に対して、従業員の健康管理を担当する役員級の責任者を置くことを奨励する方針です。加えて、同年から健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定も始めました(参考資料)。

 健康経営を重視する企業は、こうした流れをしっかりと捉えています。ロート製薬は既に2014年6月の段階で、副社長が兼務する形で「最高健康責任者(CHO: Chief Health Officer)」を設置しました。日本交通と吉野家ホールディングス、リンクアンドモチベーションは、2015年5月に従業員の心と体の健康を経営の柱の1つと位置づける「ウェルネス経営」と「最高健康責任者(CWO: Chief Wellness Officer)」制度を導入することを発表しています。

 なぜ、企業は健康管理をこれほど重視するようになってきたのでしょうか? 一言で言えば、社員の健康維持に努めることは、組織の活性化や業績向上、ひいては株価上昇につながることに気付いたからです。

 どんなに優秀な人でも、健康に不安があれば十分な能力を発揮することはできません。それ以前に、体力がなければやる気も起こらず、パフォーマンスが上がらないのは当然です。

 社員の健康に留意して積極的に投資を行うことは、その企業が社員を大切にしていることの証でもあります。さらには、健康保険組合からのは医療費給付が減るなど、直接的なコスト削減も期待できます。

 国にとっても、医療費の公的負担は増え続ける一方であり、健康維持は極めて重要なテーマとなっています。その背景には、高齢化によって患者数が増えていることに加え、ハイテク化によって医療単価が高まっていることがあります。

 例えば、近年世界中で注目を集めている「ソバルディ」というC型肝炎の治療薬があります。この薬は、従来の薬に比べて治療効果がはるかに高く、90%以上の患者に有効とされています。加えて、従来のウイルス除去率は50~70%だったものが、この薬の除去率は100%とのこと。つまり「根治」も夢ではないのです。肝炎の治療と言えば、従来はインターフェロンを注射する方法が代表的でした。しかしソバルディは経口薬なので、1日1錠飲むだけで治療できるという点でも画期的です。

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