田中 栄=アクアビット 代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー
[画像のクリックで拡大表示]

 近年、「食」をテーマに取り上げたニュースやテレビ番組を目にする機会が増えました。BSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザ、産地偽装問題、輸入食品に対する不安の高まりなど、食に関する問題が頻繁に報じられます。「食」にこれほど注目が集まったのは、この四半世紀にはなかったことです。「食」を巡るトレンドが今、グローバル規模で変わり始めているのです。

 前回、「サステイナビリティ」をテーマに解説したように、1950年には25億人だった世界人口は2016年には74億人に達するなど、爆発的な増加が続いています。さらに「食生活の西洋化」によって、この人口爆発を上回るペースで食料需要は増え続けています。牛や豚、鶏など、畜産物を生産するためには飼料として穀物が必要になります。例えば豚であれば体重の約7倍もの穀物が必要とされます。効率面で言えば、「肉」はいわば農産物を濃縮したような、ぜいたくな食べ物なのです。

 農業を営むためには土地はもちろん、水や肥料、人手、ノウハウなどざまざまなものが必要になります。環境破壊の問題もあり、農地はそう簡単に増やすことはできません。事実、1970年以降、世界の農地はほとんど増えていません。

 食料輸出に対する各国のスタンスが一斉に変わり始めたのは2007年初頭からです。当時、中国やインド、ロシア、アルゼンチン、ベトナム、パキスタンなど、さまざまな国が農作物の輸出禁止や輸出規制に踏み切りました。これからの農業は単に食料を生産するための産業ではありません。米国政府が2006年に「石油依存からの脱却」という方針を表明し、バイオエタノールの生産量を拡大。その原料にトウモロコシを使い、世界の食料用トウモロコシの価格が高騰したのは記憶に新しいところです。

 農作物は再生可能な工業原料としても注目を集め始めています。例えば、サトウキビやイモなどから作ったバイオプラスチックは一部の車種で採用が始まっています。